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私には妹のように可愛がっている女の子がいる。
「おねぇちゃ〜ん!」
「久しぶりね!梓!」
名前を梓という。素直に私を慕ってくれるこの子は可愛い。……ただ、一つだけ問題があった。
「じゃあ、家においでよ!」
「でも、お母さんが困っちゃうんじゃない?」
「だいじょーぶだよ!だって、おねーちゃんだもん!」
毎回のように自分の家に連れて行こうとすることだ。正直に言えば、あまり行きたくない。家には実の母親も居るわけだし。でも、この子の眼を見ると行く、と毎回言ってしまう。何故だろうか。
「ただいま〜!」
「……お邪魔します。」
「あらあら、お帰りなさい。……貴女も、上がって。」
やはり、母親は私が来るのを歓迎していない。けれど、追い出しもしない。その理由が何なのかは知らない。
「おやすみ、梓。」
「おやすみなさ〜い!」
梓は寝るまでが早い。私は彼女が起きないように気をつけながら、部屋を出ると、リビングに戻った。当然のことながら、母親がいる。
「では、私はこれで……」
荷物をまとめ、家から出ようとすると、母親が話しかけてきた。
「……貴女、名前は?」
「羽南、です。」
「……はな……。なるほどね。だからあの娘が……」
「?なにか……?」
私の名前を聞いて、母親は納得したように頷いた。
「いいえ、なんでもないわ。……これからも、あの娘に付き合ってね。」
「……はい、時間の許す限りは来るつもりですが……。」
「そう。……連絡を交換しましょうか。」
「え?」
「そしたら、偶然の時だけじゃなくなるでしょ?」
「はい、そうですね……?」
私は、何故急にそのようなことを言い出したのか、わからなかった。でも、何故だか訊いてはいけないような気がした。私と母親は連絡先を交換した。
「じゃあ、また来て頂戴。」
「……わかりました。」
外に出ると、冬の寒さが暖まった私の身体を貫いた。
「うう、寒!」
ふと、誰かに視られてるような気がした。バッと上を仰ぐも、誰もいない。当たり前だけど。
「……頑張るか。」
そう呟くと、私は夜道を自分の家に向かって歩き始めた。……もう少しだけ、お姉ちゃんとして、あの娘に接しよう……。
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