花言葉

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花言葉

「山城、しっかりしろ!」と冴島は、震える声で叫んだ。目の前に横たわる山城の身体からは、止めどなく血が流れ続けている。  警部が息を切らしながら駆け寄り、声を張り上げる。 「冴島、救急車が到着したぞ!」  すぐに救急隊員がストレッチャーを持って現れ、迅速に山城を運び込む。 「山城、死ぬなよ、絶対に死ぬな」と、自分に言い聞かせるように囁いた。 「冴島! お前は山城に付き添え! 犯人の連行は俺に任せろ!」警部が厳しい声で命令する。  救急車の中では、緊迫した空気が張り詰めていた。 「患者の怪我は背中。刃物による刺し傷」「血液は足りるか?」「問題ないが、早急に手術が必要だ」  その言葉一つ一つが、冴島の不安を煽る。 「山城、安心しろ。絶対助かるからな!」冴島は必死に言葉を紡ぎ、彼女に勇気を与えようとした。しかし、山城は薄れゆく意識の中でも、彼を気遣うように微かに笑みを浮かべた。 「先輩、心配しないでください。私、タフですから」山城は力を振り絞って言う。
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