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その日、僕達は早めに下校していた。夕暮れ時にも関わらず、何時もの帰り道よりも、だいぶ遠回りしながら目的の場所に向かっていく。
やがて、町外れの大通りの道路の近くに差し掛かると、
「此処が、偽物屋さんだって。」
と、隣の同級生が、目の前の古い建物を指指して言った。
その方向に、僕はつられて顔を向けると、まじまじと確認する。
そこには、古い民家があった。軒先には小さな表札で「偽物屋」と書かれている。木造で白い土壁と障子の窓が特徴的な建物で、今にも崩れそうな廃屋のような見た目である。
「なぁ、…ボロいだろう。…?」と、同級生が伝えてきた。
「うん。」と僕も何度も頷いて返事した。
それから僕達は、ゆっくりと建物の方に近づいていき、扉に手を掛けたら簡単に開いたので、恐る恐ると中に入っていった。
※※※
そこは、とても狭くて、埃っぽい場所だった。
僕らが奥に進む度に、木目の廊下はミシミシと音を立てて鳴り、さらに埃が舞い上がる。
建物の中もイメージと大差ないようである。
まるでこの家だけが、古い時代のまま取り残されているようだ。
やがて真正面に、襖の部屋があった。
すると突然、襖が開くと、中から白髪のお婆さんが姿を現わすと、挨拶してきた。
「いらっしゃいませ、…」
彼女はとても低く嗄れた声である。
とりあえず僕達も挨拶を返した。
「は、はい。…どうも。」
「こんにちわ。」
それをお婆さんは聞くと、不気味な微笑みを浮かべながら、
「此方に、商品がございます。…どうぞ、ついてきてください。」
と言い、踵を返して襖の部屋の中に入りながら、手招きして促してくる。
その後に僕達も、ゆっくりと後をついて、部屋に入った。
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