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第一話
side雪夜
それはいつも通り幸せな日だった。
仕事を終えて愛しい妻の元へ急いで帰ったのを覚えている。
妻は朝香と言って、百点満点の妻だ。
綺麗で優しくて純粋な女性、僕が心から愛した女性。
彼女の全てが好きだ。
長い黒髪も、綺麗な顔も、華奢な手も、優しい声も。
朝香は何もかも完璧な女性だった。
それに、朝香は特別な力を持っていた。
それは傷を癒す力だ、朝香は本当にすごい女性で死亡さえしていなければどんな傷でも一瞬で治す特殊能力があった。
僕も特殊能力は持っているけど大したものじゃない、朝香の方がずっとすごい。
だからだろう、奴らは朝香に目をつけた。
奴らは卑怯な手を使い、朝香を攫い施設に送った。
最も残虐だと言われる施設、No.99へ。
ここは人体実験を主にやっている施設で、ここへ入った者が生きて出て来ることは絶対にない。
この国は朝香の力をずっと欲していた。
僕が国外へ行ったのを見計らいこんな強引な手を使ってまで朝香を攫いやがった。
荒れ果てた部屋、割れたコップ、朝香がいつも綺麗に保ってくれていた部屋のあちこちに抵抗の跡がある。
何を犠牲にしても朝香だけは取り戻したい。
いや、取り戻してやる、朝香を、俺の妻を。
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