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2、新学期
四月になり、私達は小学四年生になりました。
私の学年はクラスが二つしかないので、同学年の子の顔くらいは皆覚えています。それでも一人、見覚えのない女の子が新しいクラスに居ました。その子が冬頃から噂になっていた転校生だということは、すぐ気が付きました。
都会から来たという山田さんは、凛とした綺麗な顔立ちの子でした。動く度に艶かで長い髪が揺れて、みんなの視線を奪います。
お人形のような女の子です。それも私達が着せ替えで遊ぶような玩具ではなく、美術館に飾られてきるような凄く高級なものです。
山田さんはすぐにクラスメイト達に囲まれ、質問攻めに遭っていました。転校生というだけでみんな興味津々だったのに、その人物がびっくりするほどの美少女だったので、もう好奇心が止まらなくなっていたのです。私も気にはなりましたが、人集りの中に飛び込む勇気はありませんでした。
私は一人、新しい教科書を暇潰しに読みます。区切りのつく所まで読んで顔を上げると、何故か山田さんに集まっていた人々が散り散りになっています。
気になって私は、山田さんを囲んでいた一人のみやちゃんに訊いてみました。みやちゃんは苦笑いを浮かべながらはぐらかしていましたが、一緒にいたハルちゃんが物凄く怒りながら「あの子に近づかない方がいいよ」と言ってきました。温厚なハルちゃんがそこまで言うほどの何かがあったようです。
山田さんは、かなり意地の悪い子でした。二、三日もすればほとんど山田さんと接触をしていない私でも、山田さんの性格の悪さははっきりと理解できました。だって、ただすれ違っただけで「くさい」と呟く人がいい子な訳がありません。
「あんたなんか黒姫さんに連れて行かれちゃえ!」
何があったのか分かりませんが、クラスメイトの女の子が山田さんに向かって叫びました。喧嘩になってしまうかもとハラハラしましたが、山田さんはキョトンとしただけでした。山田さんは黒姫さんを知らないようです。
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