2、新学期

2/11
前へ
/56ページ
次へ
 黒姫さんとは、この小学生に語り継がれているお化けのことです。膝まである長い黒髪の女の子の姿をしていて、青白い肌に黒いワンピースを着ているそうです。  子供を連れ去ってしまうらしく、連れ去られた子供は二度と帰ってこないという恐ろしいお化けです。トイレの花子さんみたいに全国の小学生が知ってる怪談かと思っていましたが、どうやら違うみたいです。  「いやいや、どちらかって言うと山田が黒姫さんなんじゃね? 髪長げぇし、肌白いし、今日も黒い服じゃん」  ケタケタ笑いながら星くんが山田さんを指差します。山田さんは、やっぱり黒姫さんが分からないみたいで首を傾げていましたが「これ黒じゃなくてネイビーブルーだから」と言って星くんの頬を思いっ切りビンタしました。  ある日のお昼休み、外は小雨がパラついていたので、いつもより教室に人がいっぱい居ました。山田さんは何処かへ行ってしまったようで居ません。  バン、と黒板を叩く音がして、釣られて音のした方を見ました。黒板の前には何故か自信満々の顔をした中島さんが、取り巻き二人と共に立っていました。 「山田ムカつくから無視しなさい。逆らったら許さないから。良いわね」  既に誰も山田さんに近づいたり話しかけたりしていないのに、一体何を言ってるのでしょうか? でも中島さんは「言ってやったぞ!」と言わんばかりに誇らしげにしているし、取り巻きもうっとりした表情で彼女を見ています。相変わらず周りが見えていないんだなー、と思いながらも指摘するともっと面倒なことになるので誰も何も言いません。  中島さんは我が儘な女の子でした。それでいて服はいつもブランド品で、毎日とっても凝った編み込みの髪型をしています。絵に描いたような悪役のお嬢様です。そして彼女も、多くの作品に居る悪役のお嬢様と同じように指摘されたり注意されたりするとヒステリックに怒ります。 「ちょっと、それはどうかと」  真面目なゆりあさんが一言、言ってしまいました。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加