Ⅹ-2 兄と弟(領主視点)

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「……なぜです?」 「王妃の手紙の内容を知るのが先よ」  またもや皇女の言っていることについて行けなくなってきた。小生は首を傾げる。 「でも、その方はお父様の死を知らないのでしょう? 一刻も早くご遺言を渡してあげたいと思うのですが……」  皇女は、はあとため息をついて、小生の肩を叩いた。 「貴方って本当に良い方ね……」  なんだか知らないが、ものすごく馬鹿にされている気がする。 「なんです……私はそんなに見当違いのことを言いましたか?」 「いいのよ。貴方にはまだ、あのことを話していなかったのだから」  皇女は二通目の手紙をそっと取り出した。 「全部話すわ。貴方は真っ当な心の持ち主だって思うから」 ********** 「ご子息のもとへはすぐに使いをやったわ……」  手紙を本人に手渡しするために、皇女はその方を、自分の暮らす離宮に呼び寄せようとしたそうだ。 「ところが、何度使いをやっても、その方にはお会いできなかった」 「なぜです」 「使いの者が皆、行方不明になってしまったの」  不穏な話になってきた。 「結局、使いを探すための使いを送る羽目に」  軍事国家の密使ともあろうものが情けないと皇女は首を振った。 「見つかったのは二人。揃いも揃って、記憶をなくした状態だった」 「………こわっ………」  小生は鳥肌がたった。皇女様は、どうしてそんな冷静でいられるのか。 「なるほど、それでまだそのお手紙が貴方の手元にあるのですね」 「そういうこと。私はこの数ヶ月、決して怠けていたわけじゃないのよ」 「何者かが、その方に手紙が渡ることを阻んでいる……」  皇女は頷いた。 「我が国の密使の記憶を操作して追い払うなんて、簡単にできる事ではないわ……つまりね、手練れの魔女か、相当な権力者でなきゃ無理よ」
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