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さらに翌朝、リビングに入った私は思わずその場で足を止めた。
「あ、おはようアキちゃん」
私に気付いた母がにっこりと笑った。
「ほら、チアちゃんも早く食べなさいね」
そう言って呼びかけたそこ。ずっと兄が座っていたそこ。最近では千晶人形がふんぞり返っていた場所には、今日も同じ人形が座っていた。私が刺し殺したはずの兄が。
やっとおままごとが終わるかと思ったのに。
人形の世話をするなんて馬鹿げた母を見なくて済むと思ったのに。
母は私を怒りもしない。
私が兄を殺したことなんてなかったことのように振舞っている。
あぁ、また始まるのか。あの狂った日常が。
そう思ったのも束の間、静かに座っていた兄が振り返った。
「おはよう晶良。ほら、朝ごはん食べよ」
兄は優しい笑みを浮かべていた。
こちらも私がしたことなんてなかったかのように。
あぁそっか。なるほど。これは確かに当たり前の日常だ。おかしかったのは私の方かもしれない。
夢を見ていたのは私の方だったかもしれないな。
「うん。おはよう、お兄ちゃん」
私は兄に笑みを返して、隣の席に腰を下ろした。
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