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当初は誘拐の線も疑われたが、遺体には動物による損壊の痕があった。史さんはテント広場に戻る途中で迷子になり、山に入ってしまった。その際、熊と出くわし逃げたものの、熊に追いつかれてしまった。それが警察の見解だった。
湯村さん一家に遠慮のない邪推がSNSで拡散され、誹謗中傷にさらされた。結果的には潔白が証明されたものの、根拠薄弱な疑いは晴れなかった。湯村さん一家は引っ越しを余儀なくされた。
湯村さん一家は四国の田舎である麻美に移り住んだ。
父は6年前に他界し、このたび母も他界した。
遺品整理のため片付けをしていた博生さんは、近所の人からある話を聞いた。
近所の人は、博生さんの両親がたびたび近くにある森へ入っていくのを見かけていた。その森は気軽に入れるようなところではなく、夜になれば森の周辺は街灯がないので真っ暗になってしまう。
何をしに森へ入っているのか不思議だったので、近所の人が聞いたそうだ。すると、博生さんの父は「息子が……史がいるんです……」と呟いた。その時の博生さんの父は異様な目つきをしていて、それ以上聞けなかったようだ。
博生さんの父は軽い認知症の気があった。なので、病気のせいで変なことを言っていると、近所の人は思っていた。だが、博生さんの両親が入っていた森は妙な噂があった。
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