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20.赤城と羊野、絶望王子を捕まえる
20.赤城と羊野、絶望王子を捕まえる
時刻は十八時〇七分。
団地が連なる一角の駐輪場で、黒い防空頭巾を被ったマント姿の学生通り魔が金属バットを振り上げながら止めてある自転車にその金属の棒を叩きつける。勿論防空頭巾の頭上には段ボールで出来た幼稚な汚らしい王冠が色悲しく飾り付けられている。
そんな暴力的な蛮行を目撃した市民からの通報で現場へと駆け付けた赤城刑事と羊野瞑子は、地元の警察官に誘導されながら駐輪場で自転車を壊す絶望王子の姿を確認する。
当初絶望王子は自転車を壊す事に夢中で近づく三人の存在に全く気付かなかったが、目の前に現れた赤いジャケットを着た自信満々な女性と白い羊のマスクを着けた白一色の可笑しな羊人間の接近に、大いに取り乱す。
それだけ後ろにいるごく一般的な警察官の存在が色あせてみえるほどに、二人のインパクトが強烈だったからだ。
真剣な眼差しで迫る赤城刑事に絶望王子は周りを見渡しながら持っている金属バットを振り上げ威嚇するが、振り下ろした金属バットの攻撃を悉く躱した赤城刑事は絶望王子の胸ぐらを強引に掴み上げると顔をグッと近づける。
「やっと見つけたわよ、絶望王子。よくもチョロチョロといろんな所に逃げ回ってくれたわね。ルール上私と羊野さんしか貴方を探す事は出来ないから、動き回る絶望王子を探し出すのにはかなり苦労をしたわ。そして貴方がこの半年間、無差別に人を階段から突き落としている黒い防空頭巾を被った黒マントの学生通り魔、通称~絶望王子ね! もう逃げられないわよ!」
「な、なんなんだ、お前らは……放せ、放さんか!」
必死に抵抗し叫ぶ絶望王子に赤城刑事は「てやぁー!」と言う気合いと共に絶望王子を地面へと投げ飛ばす。どうやら赤城刑事の背負い投げが綺麗に決まったようだ。
「うわあぁぁぁー、 ぐへぇ……っ!」
地面へと投げ飛ばされた隙に素早く抑え込まれた絶望王子は苦悶の声を上げると赤城刑事の関節技から逃れようと必死に藻掻くが、がっしりと関節を決められたあげく寝技に持ち込まれている事もあり、絶望王子は体を動かすことが全く出来ない。
「一体誰なのよ、貴方? さあその正体を明かして貰うわよ!」
そう言うと赤城刑事はその頭から被っている防空頭巾を勢いよくひっ剥がす。そこに現れた顔は、汚らしい風貌をした六十代後半くらいのおじさんだった。
「想像していた犯人像と違うわね。だ、誰よ、この汚らしい風貌をしたおじさんは?」
困惑する赤城刑事の問いに傍で見ていた羊野がその答えを応える。
「貴方が恐らく田中友男さんの言っていたやっさんと言うホームレスですね」
羊野のその指摘にやっさんと呼ばれたその男は驚きで顔を上げる。
「た、確かに俺は仲間内からはやっさんと呼ばれているが、なぜ俺がやっさんだと直ぐに分かったんだ?」
「貴方はあの田中友男さんのお酒の飲み仲間何ですよね。田中さんのアリバイを調べる為にその近くの飲み屋とやらに昨日の内に電話をして色々と確認を取っていました。そしてそのついでに、やっさんという飲み仲間の写真はないかと女将さんに聞いてその素顔を記憶していた次第です。もしかしたら苦し紛れに田中さんがでっち上げた架空の人物かも知れませんからね。たまたまその店の女将が田中さんと貴方の写真を写してスマホのフォルダーに保存していたみたいでしたので、それを私のスマホに送って貰ったと言う訳です。そしてその写真に写っているやっさんとか言うホームレスの叔父さんの顔をたまたま覚えていましたので直ぐに貴方がやっさんだと気づく事が出来たのですよ」
「写真を……そうか。確か前に酔っ払った時に悪ふざけで女将さんに写真を撮って貰った時があったな。でもまさかその時の写真をまだ持っていたとは……」
「貴方と田中さんが余りに言い笑顔でお酒を飲んでいたから、女将さんはその写真を消すに消せなかったと言っていましたよ。それだけあの女将さんにとって貴方と田中さんは印象深いお客さんだったと言う事です」
そう言うと羊野は、羊のマスク越しにその顔をやっさんと呼ばれるホームレスの顔に近づける。
「それで……貴方にこんな事を命じた本当の犯人は一体何処にいるのですか。顔は当然見たんですよね。もしかして私達のよく知る人物なのでしょうか。教えて下さいな!」
「し、知らない、知らないよ。本当だよ。確かに俺はこの防空頭巾の格好で町中で少し暴れてくれと頼まれたが、頼んできた奴の顔は防空頭巾の顔の部分を黒いネットの網で遮断していたから、全く見えてはいなかったんだ。本当だよ!」
「では一体どうやってその人物から依頼を頼まれたのですか」
「一昨日の夜の二十一時に飲み屋の個室を借りて田中さんと話をしながら深夜の一時までず~と二人で語らいながらお酒を飲んでいたんだ。俺が若かりし頃ムショの中にいた時の話とか……暴力団の抗争に巻き込まれた話とか……ホームレスに降りかかる高校生によるホームレス狩りの話とか……この町で起きた昔のちょっとした事件の話とか、まあ、いろいろとな」
「なるほど、いろいろですか。それで、貴方と田中さんはいつからの仲なのですか」
「二年くらいからの仲だよ。二年前に公園で缶拾いをしている時に行き成り話かけられたんだよ。『精が出るな、叔父さん。近くにいい飲み屋があるから一緒に酒でも飲まないか……大丈夫全部俺のおごりだから』とか言ってな。最初は何故俺みたいなホームレスに酒を奢ってくれるのかと正直不信に思ったが、おごってやる代わりに何か自分が知らない為になる面白い話を教えてくれと言っていたから、この人は俺からホームレスの話を聞きたいんだなと逆に納得させられるのにそう時間は掛からなかったよ」
「それ以来の中なのですか。中々に面白い関係性ですわね。まるで私と黒鉄さんみたいですわね。それで、その二年の間に田中さんが一番興味を引いていた……何か印象深い話は何ですか?」
「そうだな。田中さんが一番食いついていた話はやはり一年前に話したあの話かな。ある高校の校舎で階段から落ちて死んだ生徒の母親が息子を失ったショックで今も必死に学校側と争っていると言う話だったかな。その母親は弁護士を雇って裁判に持ち込んだらしいんだが、裁判費用も馬鹿にならないし、多分その母親は長続きしないだろうな。的な話を一年前にしたのを覚えているよ。何でもその事故の話は田中さんが仕事をしている高校で起きた出来事みたいでかなり興味を持っていたのを覚えているよ」
「なるほど、あの田中さんが興味をね。それで、その母親はその後どうしたのですか?」
「その後は確か、その母親は心労が祟って病気になって死んだと記憶しているぜ。母一人子一人だったから無理がたたったんだろうぜ。結局はその裁判にも負けたみたいだしな」
「そんな事があったのですか。なるほど、階段事故でただ一人の息子を亡くした母親ね……そしてその後、その母親も亡くなっていると」
「ああ、だがその話はさっきも言った用に一年前に田中さんに聞かせた話だから。今はもっぱらこの地域に住む不良高校生達の話題だな。何せ田中さんは今の高校生達の現状を見て、これで江東区の学生達は大丈夫かと言って若者達のこれからの行く末を心配している程だからな。まあ、田中さんも高校で用務員として生徒達を見ている手前興味のある話だったのだろうよ」
「田中さんと貴方がお話ししていた内容は分かりました。それでその田中さんと居酒屋で別れてから貴方はどうしたのですか?」
「店の前で田中さんと別れてからその後は、俺は一人で夜道を歩きながら川端にある自分のテントに帰ろうと家路に向かっていたんだよ。そんな時にあのお前達が言う黒い防空頭巾を被ったマントの学生に会ったんだ。その黒い防空頭巾を被った学生が言うには、この世知が無い世間を面白くする為に衝撃的で気分も発散できる画期的な動画を取っているから、あんたも協力してくれないかとその男に頼まれたんだよ。最初は凄く胡散臭い奴だと思ったから直ぐに断るつもりだったんだが、前金に五万円もくれたから……あの黒い防空頭巾の学生の姿に扮して町中で暴れるだけなら別にやってもいいと思ったんだよ。俺に暴れさせてその動画を陰から撮るというただの道楽物の動画だろうから、適当に暴れて後金を貰えば軽い仕事で丸儲けだと思ったからやったんだ。実際仕事後に払われるはずの後金も三十万円といい金額だったからな」
「それでその得体の知れない人物から頼まれた依頼をあなたは実行に移したのですか。あの犯人が半年前からこの江東区で事件を起こしている黒い防空頭巾学生の通り魔とは気付かなかったのですか」
「前に何処かで拾った新聞にその黒い防空頭巾の学生通り魔の特徴が載っていたのを見たけど、まさか目の前に現れたその男があの学生通り魔とは思えなかったからな。不信に思いながらも彼の依頼を手伝う事にしたんだよ。俺にはともかくこれから生き抜く為のめぼしい金が必要だったからな。そしてそれが普通じゃ手に入らない大金なら尚更だ!」
「なるほど、貴方が接触したその人物が男だと分かったと言う事は、顔は見えなくても声の質や姿形からそれが男だと判別出来たという事ですよね。ならその人物は一体何歳くらいの人だと思いますか。貴方の目測でいいので答えて下さい」
羊野のその問に、やっさんと呼ばれているそのホームレスは真剣に悩み応える。
「うう~ん、確かに高校生の制服を着ていたが、恐らくだがあれは多分高校生じゃないな。なんか言い方や声の質が、大人がかっていたからな。体型は……そうあの田中さんと変わらないくらいだったよ」
そのやっさんの言葉に今度は今まで彼を押さえ込んでいた赤城刑事が何やら確信めいた声を上げる。
「ならその田中さんも十分に怪しいと言う事ね。早く高校にいる勘太郎に連絡して田中友男をマークしないと」
「おい、俺は背丈が田中さんと似ていると言っただけで田中さんが犯人だなんて一言も言ってはいないぞ。妙な言いがかりで俺の気のいい飲み仲間を疑うなよな」
「貴方は知らないでしょうけどあの田中友男もまた、あの絶望王子に扮した犯人かも知れないと言う容疑が掛けられているのよ」
「あの田中さんが。まさか……そんなのは嘘だ、俺は絶対に田中さんを信じるぞ。あの気のいい田中さんがあんな階段事故を起こした犯人のはずが無いんだ。絶対にな!」
「ならその証拠となる物を示して貰わないと私達も田中さんを容疑者候補から外す訳にはいきません。何か田中さんが犯人では無いと言う証拠を示して下さいな」
羊野の挑発めいた言葉にイライラしている用だったが、やっさんはフと何かを思い出した用に言う。
「そ、そう言えば一昨日の夜に会ったあの黒い防空頭巾の学生の体から強い香水の匂いが漂っていたのを思い出したよ。なんの香水かは分からないが、あれは絶対に何かの香水の匂いだったよ」
そんなやっさんの確信めいた言葉に、赤城刑事がすかさず口を挟む。
「それは貴方の口から発せられるお酒の臭いと勘違いしたんじゃないの。さっきの話の口ぶりだと大分お酒を飲んでいたらしいじゃ無い」
「確かに大分酒を飲んではいたが俺は酒で意識を失う程アルコールに弱くは無いからな。人が漂わせている香水の匂いくらい分からないはずはないさ。結構キツい香水の匂いだったからな、しっかりと覚えているぜ」
「いや、ついさっきまで忘れていたじゃない」
そんな赤城刑事のツッコミに話を聞いていた羊野がすかさずある提案をする。
「香水の匂いですか。なら一人心当たりの人物がいますわ。その香水が一体何の香水かは正直調べてみないと分かりませんので、これから貴方には近くのデパートの化粧品店に共に行って貰って、その香水が何か言い当てて貰いますよ」
「ええぇぇ~、今からかよ!」
「ええ、今からです。急いで下さい、もう時間がありませんから」
「分かったわ、羊野さん。ここは私が彼を近くの化粧品売り場まで連れて行くから、貴方は勘太郎の元に行ってあげて頂戴。緑川さんと二人だけじゃ流石に不安でしょうからね」
「分かりました。香水の匂いの件は赤城さんにお任せします。もし何か分かったら連絡を下さい」
「ええ、分かったわ。と言う訳でそこの警察官のお兄さん。この羊野さんを江東第一高校まで至急連れてって貰えないかしら。ちゃんと貴方の上司にも説明しておいてあげるから安心して彼女を目的の場所まで連れて行って頂戴!」
「わ、分かりました。直ちに車を回します!」
緊張した面持ちでそう返事を返すと、その名も知れない若い警官は急ぎ足で自分が乗って来たパトカーを取りに行く。
そんな警官を見送っていた羊野が何かを思い出したかのようにやっさんに話し掛ける。
「あ、そう言えば一昨日の夜、田中さんは貴方と二人で居酒屋の個室で焼酎の水割りを飲んだと言っていましたが、一体何の焼酎を飲んだのですか? 教えて下さい」
「しょ、焼酎だって? な、なんでそんな事を聞くんだよ」
「昨日は田中さんと聞き込みで色々とお話していたのですが、その時に何故かお酒の話になりましてね。その時田中さんが『俺は九州男児だから焼酎しか基本的には飲まない』と言っていたのを思い出しましたから、一昨日は一体なんの焼酎を飲まれたのかと気になっていたのですよ。実は私も結構なお酒好きですが飲むのはウイスキーやワインが主なので、もし美味しい焼酎を知っていたら是非とも教えて欲しいと思いましてね。一昨日一緒に田中さんと焼酎を飲んだと言う貴方に聞けば一体何の焼酎が一番おいしかったか教えて貰えると思いましてね。フと今その事を思い出したのですよ。聞いた話では貴方もかなりの酒飲みみたいですからね。一体何の銘柄の焼酎を飲まれたのかと思いましてね」
その回答にやっさんは数秒黙っていたが、直ぐに言葉を返す。
「焼酎か……本当に田中さんは焼酎を飲んだと言ったんだな」
「はい、言いましたが、それが何か?」
「いや、何でも無い。そうだな、一昨日はいろいろとお酒を飲んだが、焼酎はいいちこを飲んだ用な気がする。いいちこなら何処の居酒屋にもある焼酎だからな。多分飲んでいるだろう」
「飲んでいるだろうと言うのはどう言うことですか」
「いちいち飲んだ焼酎の銘柄なんておぼいてないと言う事さ。残念ながら俺は酒なら飲めれば何でもいいからな」
「そうですか、いいちこと言ったら大分県のある三和酒類株式会社が製造しているお酒ですよね。確かにみんなに愛されている焼酎ですがそれだけではありませんよね。他にも沢山飲んだはずです。そう田中さんが言っていましたからね」
「なんでそんなに焼酎の事を頻りに聞きたがるんだよ?」
「だってあなたは田中さんが無実であることを信じているのですよね。なら貴方の口から田中さんと共に飲んでいたと言う焼酎の銘柄が口から出れば、田中さんがあなたとこの場でお酒を飲んでいたと言う証拠になるとは思いませんか」
「そうか……そうだな……確かに俺が田中さんと飲んでいた焼酎の銘柄を当てることが出来れば田中さんの疑いが晴れるんだな。確かにそうだぜ!」
「それで……田中さんとあなたは本当にあの個室で焼酎を飲んだのですか。本当は一昨日の夜あの居酒屋に田中さんはいなかったのでは無いのですか。つまり、あなたが一人で田中さんに頼まれてでっち上げた作り話です」
「違う、俺は一昨日の夜確かに田中さんと焼酎を飲んだんだ!」
「で、何の焼酎を飲んだのですか」
「それは大分県のいいちこ、だけで無く焼酎と言ったら、熊本の球磨焼酎に鹿児島の薩摩焼酎と言った焼酎も人気かな。それらを俺は田中さんと一緒に確かに飲んだよ」
「そうでしたか。あの田中さんがねぇ~、焼酎を飲まれていましたか。なるほどなるほど」
「何だよその言い回しは、あんたが田中さんは何の焼酎を飲んだのかを聞いたから答えたんだろ」
「はい、確かに言いましたが、そのお酒のお話はもしかしたら私の勘違いだったのかも知れません。実は昨日田中さんはあなたとはビールしか飲んでいないと証言していましたからね」
わざとらしくすっとぼける羊野瞑子の言葉に、やっさんは顔色を青くしながらしまったというような顔をする。
「な、何だとう、お前まさか、俺を嘘の話ではめやがったな!」
「さて、一体何のことでしょうか。貴方と田中さんのアリバイを証明する為に敢えて飲んでいたお酒の銘柄で証明しようとしたのですが、逆に私の勘違いで貴方の嘘が分かってしまいましたね。あのまま田中さんと打ち合わせ道理にビールを飲んだと言っていれば嘘は隠し通せたかも知れませんのにね。本来の打ち合わせとは違う行き成り出た焼酎の話にあなたが勝手にびびって話を盛ってしまったから、せっかく作り上げたアリバイを自らの証言で壊す結果になってしまったのですよ」
「ちくしょう、ちくしょう、こんな子供だましの手に引っかかるだなんて、この嘘つきめ!」
「ホホホッその言葉を否定はしませんが、あなたは飲んでもいない焼酎を飲んだと言った時点で貴方と田中さんのアリバイはとうに崩れていたのですよ。だってそうでしょ、注文の事は女将にその日にレジに打ち込んだ伝票の記録を見せて貰ったら貴方が一体何を注文したのかは一目で分かりますからね」
「くそ~、田中さんと俺のアリバイを本来のビールと行き成り出て来た焼酎とを照らし合わせるのに夢中で、注文した品と伝票の証拠までは考えに至らなかったぜ。だから焼酎の質問で俺の頭を注文した品の数に行かせない用にしたんだな」
「恐らくこの時間稼ぎの計画を立てる為に田中さんとあなたはかなりの数の品々を注文したはずです。だって注文した飲食の品々が少ないと定員が様子を見に来るかも知れませんからね。でも逆にだからこそあなたは注文した数多くの品々に気は回らなかった。何せ話ではお酒もいろいろと注文していたみたいですからね……そうあの焼酎以外は」
「だから俺達のアリバイを崩す為に焼酎で俺を釣ったのか」
「釣ったとは人聞きの悪い。ただ私がビールを焼酎と勘違いしていたから、貴方の話にボロが出てしまっただけの事ですわ」
「はあ~、羊野さん、あなたのハッタリとペテンはまるで息を吸う用に自然とその口から出てしまう用ね。ほんと恐ろしい子ね、あなたは。このやっさんの事は任せて頂戴。化粧品売場で香水の事を聞いたら、後できっちりと絞り上げて置いてやるから!」
そんな赤城刑事の言葉に羊野は羊のマスク越しにニヤリと笑うと、その場を後にするのだった。
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