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すると、さっきとは全く違う普段の服装で、息子の太郎をあやしながら渚が出てきた。
「渚さん。もう着替えたの?血糊とか、大変やったやろ」
と由貴が尋ねると、渚は少し驚いた表情を浮かべ、
「えっ……? あ、頼まれてた幽霊役のこと? ごめんね、太郎が泣き出しちゃって、結局行けなかったんだけど……もう終わっちゃったの?」
ときょとんとしている。
由貴と虹雨は顔を見合わせ、
「え、あの幽霊……渚さんじゃなかったの?」
と困惑気味に口を揃える。
実は、由貴はニセモノたちを懲らしめるために妻の渚にリアルな幽霊役を頼んでいたのだが、渚はずっと太郎をあやしていたという。
「ずーっとママと一緒にいましたよ、ねえ太郎ちゃーん」
と渚が太郎に話しかけると、
「だあっ!!」
と満面の笑みで応える太郎。
由貴は、その可愛い笑顔に癒されながらも、状況が理解できず困惑を隠せない。
そんな由貴に、渚はふと真剣な顔で微笑みながら言った。
「由貴、あなたのことは信用してる。だって、奥手だったあなたが女の子に酷いことなんてするわけないでしょ? それに虹雨さんだって」
こうして渚たちからの信頼は無事に戻ったものの、虹雨と由貴は頭を抱えた。
さっきの親子の血まみれの霊こそが、実際にあのニセモノたちに恨みを抱く生き霊だったとは……。
虹雨はハッとした表情で口を開く。
「しまった、あれ除霊してないから、警察署までついて行ってるかもしれん……」
「……めっちゃ強力やったな。まぁ僕らは関係ないってことで……」
と、由貴も困惑気味に同意した。
終
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