6人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ
採石で造られた古の闘技場を模した会議場にアストラルの姿があった。
「よくやってくれましたアストラル。ダンテのみならず意思を継いだであろう六つの盾まで葬るとは。さらに傭兵を英雄に仕立て両国に復興の希望まで与えるとは。今回の功績は、リ:バースにおいて今後あなたの発言に大きな力を与えるでしょう」
アストラルは首を垂れたまま、その賛辞が終わるのを待っていた。
「ところでアストラル。ツェッペリンとかいう傭兵の記憶は、本当に大丈夫なのですか?」
「はい。彼の記憶は忘却の小瓶に封じました。蘇る事はございません」
「そうですか。では続けてラジロアとクラナの復興を隠微に監視してください」
「わかりました」
機密結社リ:バースは任務における行動に一切関与しない。つまりアストラルもまた使い捨ての駒なのだ。
会議場を出たアストラルは頭の中で今後の画策を練っていた。ツェッペリンの素性と記憶がないという報告は嘘だった。ロジャーはアストラルの言葉によってアストラルの味方についたのだ。ロジャーが戦争を終わらせた英雄として国民を導く復興は、実質アストラルがラジロアとクラナを手中におさめるも同然だった。
アストラルの目にはリ:バースの大人たちが安全な所でゲームをしているようにしか見えていなかった。そしてダンテの最後となったメッセージはイリスにあてたものだった。イリスはダンテとの繋がりを隠していた。今回のダンテ暗殺は、イリスが地位を確固たるものとする為の茶番だったのかもしれない。もしかしたら戦争さえも。
アストラルは、今はまだ手段としてリ:バースに身を置いているが、密かに賛同者を増やしていた。たとえそれが言葉の力によるものだとしても、アストラルは信念をもって心に誓っていた。
『きっと世界をリバースしてやる』と。
最初のコメントを投稿しよう!