侵入

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侵入

 夜の帳がおりると、俺はヴィンセントから聞いた六つの盾(ヘキサシード)との待ち合わせ場所に向かった。そこは城から離れた市場だった。ヴィンセントが言うには、ダンテは城にはおらず隠れ家があるらしい。一方的な戦争の首謀者だ、暗殺を警戒して何処かに身を隠しておかしくない。運までも俺に味方していた。このまま確かな居場所まで案内してもらえるってわけだ。  ヴィンセントとローブをまとった二つの影が落ち合うのが見えた。三人は人気のない市場の裏手に回り、立ち並ぶ木造倉庫の一棟で足を止めた。無防備に見える倉庫は、呪文可視鏡(スペルグラス)を通して見ると淡く光っていた。何かしらの魔法がかかっている証拠だ。するとフードをまとった一人が扉に手をかざすと何か模様を描くような動きをみせた。倉庫の光が消えると、扉を開けて三人は中に入っていった。再び淡く光る倉庫に俺は慎重に近づき、さっき見た動きを真似て扉の前で腕を動かした。そうして俺は、まんまと潜入に成功した。  倉庫の床には穴が開いていた。覗けば鉄の階段が螺旋状におりていた。俺は音をたてないように降りると、そこから続く削られた岩肌のスロープをくだった。やがて岩肌は無機質な通路に出た。 「ダンテがこの先に」  自分が唾を飲み込んだ音で、自然と緊張していたことに気づいた。 「あぶない、あぶない、判断が鈍っちまう」  ヴィンセントが段取り通り上手くやっていることを願って、俺は歩を進めた。  少し慎重すぎたか時間がかかってしまった。やっと辿り着いたのは、鍵穴のない重厚な扉だった。ここがダンテの隠れ場所に違いない。俺は先が二股に分かれた銅製の棒を取り出した。二股部分を指で弾くと、魔道具音察器(エコー)から放たれた音の波紋が光となって広がり扉の向こう側がシルエットになって浮かび上がった。見える範囲でも床に四人倒れているのが分かった。どうやら上手くいったようだ。ダンテの部屋はもっと奥だろう。すんなりと開いた分厚い扉に俺は体を滑り込ませた。
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