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テーブルの上にはディナーが並べられていたが、具の少ないオニオンスープに、彩りの少ないレタスだけのサラダ、張りのない小さなソーセージ、硬そうなパンのみだった。
それでもデュロイ伯爵家の子どもたちは楽しそうにテーブルを囲んでいた。
長女マーサは、大きな声で弟妹たちの名前を呼んだ。マーサはすでに二十三歳だったが、結婚も婚約もすることなく完全に行き遅れてしまっていた。
「ベンジャミン!」
「はいはい」
マーサのすぐ下の弟で長男のベンジャミンは後継ぎだったが、何をするにもやる気がなかった。
見た目も悪いわけではないし、勉強もできないわけではないのに、やる気がない。だから婚約者もいなかった。
「ローラ~」
「はーい。夕食の準備はオーケーよ」
ローラは上から三番目の次女。毎日、夕食の準備など家事をよく手伝ってくれる上に勉強もよくでき、生きる上の賢さも兼ね備えていた。
「いつもありがとう。私もエレナもとても助かっているわ」
エレナはデュロイ伯爵家の唯一の使用人で、ずいぶん昔から家事一切を担っており、マーサとローラはその手伝いをするのが日課だった。
「あとは素敵な人との出会いがあればいいのだけれど……」
「素敵な人がいれば、自分でどうにかするから大丈夫よ」
「あら、そうよね」
マーサはにっこりと微笑む。
「お次はトマスとマーク!」
「ちょっと待って、何でまとめて呼ぶんだよ!こいつ一緒とかやめてくれよ」
文句をたれているのは、四番目の次男トマス。
「ボクだってイヤだよ。トマスと一緒にしないでよ〜」
五番目の三男マークも口を尖らせていた。次男と三男は年も近いので、何かとまとめられがちだった。
「いいじゃない仲良しなんだから」
「仲良くないし!」
「仲良くないやい!」
二人の反抗も意に返さないマーサは、末っ子の三女アシュレイに目を向ける。彼女はまだ七歳。アシュレイが産まれてまもなく、母親は持病が悪化して他界していた。
そのため、下の三人の弟妹たちはほとんど母親の記憶はなかった。
「アシュレイは行儀よく座っているかしら?」
「はーい!お皿も並べたのよ」
アシュレイは元気よく右手を上げて返事した。
「えらいわ、アシュレイ。これで六人全員揃ったわね」
父親は貧乏暇なし、といっても仕事がよくできるような人間でもないのだが、子どもたちと食事をともにすることはほとんどなかった。
「はーい、揃いました!」
小さな男の子が手を上げる。
「って、あれ?よく見たら七人いるじゃない!誰なの、この男の子は?」
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