4、ジェリーフィッシュ・プラネット

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4、ジェリーフィッシュ・プラネット

乃愛はまだ瞳を濡らし ぐしゅぐしゅと鼻を鳴らしている。 頬は赤く、唇は不満そうにとんがったままだ。 二人は黙ったまま 壁に書かれた順路の矢印どおりに スロープを登り、ペンギン広場を通り過ぎ ヒトデたちのタッチプールをすり抜け イルカショーのプールに面した 『ジェリーフィッシュ・プラネット・カフェ』の前まで来た。 「これ、飲む?」 立ち止まったユウギは、 カフェメニューの立て看板を指さした。 いつもと同じ表情、低いテンションの声だった。 ユウギは! 頭にこないんだろうか! ミジンウキマイマイが もらえなかったこともそうだけど あの元気なクリオネたちも いつかお腹が空いて死ぬ運命だということに! 乃愛は唇をとがらせたまま 「飲み物?」 と訊いて顔を上げる。 ユウギの指がカフェメニューの立て看板の 大きな写真を指している。 丸い横長のボールに 黄緑や赤の影絵みたいなフルーツが沈んで ストローが刺さっていた。 「なにこれ、かわいい💓  何か入ってるね」 乃愛の目が光った。 「な、た、で、こ、こ って書いてある  なんだ、それ」 「知ってる!  ゼリーみたいやつだよ」 「コレ飲む?」 ユウギは、相変わらずなテンション。 「うん、飲む!」 乃愛はすっかり涙が乾いたようだ。 ついでに喉も乾いてる。
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