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乃愛が民生員に会った数日後。
スーパーのパートから帰った智子に
乃愛が駆け寄った。
制服から着替えもしていない。
「ね、ユウギが施設に送られたって
学校で噂になってるけど」
智子は顔色を変えず
スーパーの売残りお惣菜をドサっと下ろすと
スニーカーのまま玄関口に座り込んだ。
「ねえ!ママ知ってたの?
ユウギママから連絡きたの?」
智子は、ウンザリしたようにゆっくり首を横に振る。
「今日、パート先で聞いた」
「なんでパート先で?
噂になってるってこと?」
「ちがうの…
ユウギが学校に来てないことや
ユミさんの痣の話を
先週、杉山さんに話したの。
それは…杉山さんのお義姉さんが
民生員やってるって聞いてたから
何か、助けにならないかと思って」
杉山さんというのは
智子の仲の良いパート仲間で
ユミのことも知っている。
「… … !!
じゃ、あの民生員
ママのせいでユウギんとこに来たんだ⁈」
「まあ、そうなのよ」
「で、どうしてユウギ施設に入れられたの?
おばさん、また倒れたとか?」
「それが…
ユウギは一時保護施設に
強制的に入れられたらしいの
児童虐待ってことで」
「ぎゃくたい?
え?
ユウギが虐待されたってこと?誰に⁈」
「それが…
よくわからないのよ」
やられて痣を作っていたのは
ユミの方だったじゃないか。
乃愛はスニーカに素足を突っ込んで
そのまま智子の脇をすり抜け
玄関を走り出た。
「待って!!私も行く!」
あとから智子が走って追ってきた。
2人は黙って、夕暮れの街に
自転車を飛ばす。
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