2、コロナ

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ユウギはコンロの火を止めた。 「乃愛も食う?」 「やば!美味そう!  朝ごはん食ったんだけど!」 お皿3つに、卵が絡んだだけの 黄色いパラパラ・チャーハンが分けられた。 香ばしい醤油とネギの匂いだ。 ユミは後遺症が前より悪くなったのか 寝起きのせいなのか 足をのろのろと引き擦って、やっとキッチンまで来た。 青白い顔は痩せたのに どこか水腫(むく)んでいる。 首を伸ばし、乃愛のスマホを覗いた。 「江の島水族館?いいねー行ってきなよ」 ユミは、自分が行くかのように瞳を輝かせ せっかく座った椅子からゆっくり立ち上がると 布団の敷いてある部屋から財布を取ってきた。 1万円札をテーブルに置く。 「これで足りる?」 「え、こんなに?かからないよ!」 乃愛はおかしそうに笑って言った。 「だって、電車が往復で1人¥800でしょ  入場料が、中学生は¥700でしょ  イルカのショーを見るとプラス¥300でしょ」 「いいよ、持っていきなよ  ご飯も食べるしアイスとか  欲しいものとかあるじゃん、きっと足りないよ」 そう言って 一万円札を突き出す。 「おばさんも行く?」 「ううん」 首を横に振った、つもりだろうけど ユミの首は微かに揺れただけだった。 相変わらず無表情だが 乃愛には最近、ユミの感情が少しわかる。 今は、とてもうれしそうだった。
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