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恋愛は喜劇的な悲劇な気がする
最近、貴史はそわそわしている。
昔から落ち着きのない子供だったけど、年を重ねるたびに少しは落ち着いてきた。
けれど高校2年生になった今、また小さい頃を彷彿とさせるような落ち着きのなさが常にある。
昔の様子を久しぶりに見て、可愛く思えた反面、落ち着きのない理由については憶測だけどなんとなく分かる。それはきっと大人の階段を登っている証拠なのだろう。
これはきっと誰かに恋をしている。通知音がなるたびにスマホをいつも触っていて、スマホの画面を見る度、ニヤニヤしている。
昔なんて、電話が主流だったから、私が学生の頃なんて、親に恋愛しているのがすぐにばれた。デートに行く場所、時間とかすぐに情報共有を求められた。
今は、裏でこそこそ付き合える時代になっている。それが良いのか、悪いのか分からないけど。
机の上にあるスマホの通知音がなる。
めずらしい、お風呂に入っているときでも、浴槽内でスマホをいじっているのに。
突然誘惑が襲ってくる。これはそわそわしている原因が分かるチャンスじゃないか。
貴史には申し訳ないが、携帯の中を見ることにした。携帯の画面はなぜかロックがかかっていない。 あいかわらず、詰めが甘いところが私に似てしまったのだな。息子に申し訳ない気持ちが携帯をスッとポケットに入れる。
「ねー。俺のスマホ知らない?」
「ん?知らないけど。いつもスマホを片時も離さずにもっているじゃない?」
「いや、そうなんだけど。今日はいつもより疲れたし、ぼーとしてたから。あまり、どこにスマホ置いたのかわからん。」
「まー探しとくわよ。もう今日は寝たら?」
「はいはい。」
息子よ。すまない。私が勝手に取っている。
「じゃーおやすみなさい。」
「はい。おやすみ。」
貴史は、割と反抗期なく、素直に育ってくれた。私が高校生の頃は反抗期がひどすぎて、家の窓を何回も割って、たくさん親から怒られた。あー高校生の頃は私の素行が悪くて、親が呼び出されたこともあった。
そんな私と比較すると貴史は純粋によい子に育った。ここは夫に似たのだろうか。
そんな素敵な息子だからこそ、申し訳なさが倍増するが、私の好奇心が抑えられない。
自室に戻り、携帯の中を見ることにした。
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