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プロローグ 錆びた夢
死にたいと毎日思っていた。
あまりに日常の中にその願いが浸透しすぎて、慣れてしまったほどに。
体調はいつも悪くて、熱っぽいし、頭痛がずっと続いている。
施設に入っている私のおばあちゃんや、今はもういない姉も、以前はそうだった。
生きていれば、死にたいと願うことなんて、普通の人だってきっとそう珍しいことじゃない。誰だって一度は――いや、きっと何度も思うことなんだ。
慣れればいい。慣れてしまえば、ひとまずは生きていける。今がそうであるように。
それでも、こうも絶え間がないと、さすがに参ってしまいそうになる。
私に触れた人は、みんな死のうとする。
それでも、一晩耐えきれば、その人たちの自殺念慮はだんだんと薄まっていって、やがては元に戻る。
私は違う。明日も、明後日も、死にたがりながら生きていく。……いつまで?
枕もとの時計を見た。
とっくに午前零時を回っている。
また、ちゃんと眠れないまま朝が来る。
雀の鳴く声が響き出すのが怖い。
窓の外でしらじらと明るくなっていく朝の光が、古いのとあちこち破れているせいでぼろぼろのカーテン越しに、部屋に忍び込んでくるのが怖い。
たいていの場合、私と同じ高校生くらいの女子というのは、夜の闇のほうが怖いらしい。
変わっているな、と思う。
私は、ようやく終わって夜に包まれた昨日より、新しく始まる明るい今日のほうがずっと怖い。
怖すぎて、死にたくなる。
左手首を見た。
縦横に走る何本もの傷跡で、あの古いカーテンよりもぼろぼろだった。
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