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矛盾と葛藤
その日から、葵との帰り道が続く中で、僕は彼女の中にある複雑な感情に気づくようになった。彼女は自分をさらけ出すことを避け、冷徹な態度で誰にも近づこうとしない。その姿を見ていると、ますます彼女の心の奥にある痛みに触れたくなった。
ある日、僕は思い切って葵に尋ねてみた。
「葵、なんでそんなに冷たいの?」
葵はその問いに少し驚いたようだったが、すぐに無表情に戻り、低い声で答えた。
「別に、冷たくなんてない。」
「でも、いつもみんなから距離を取ってるし、顔もいつも無表情だろ?」
葵は少し黙って、目を伏せた。そして、ため息をつくと、静かに言った。
「私は、誰にも心を開かない方が楽だから。」
その言葉は、どこか寂しさを感じさせた。葵の中に何かしらの傷があり、その傷を隠すために無理に冷徹な態度を取っているのだろうか。僕はそれを知りたくなったが、どうしても聞き出すことはできなかった。
だが、葵が少しずつ僕に心を開いていくのは、時間の問題のように思えた。
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