ふたり、ひらり

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——一緒に登校するなら、もっとマシな格好して来いよ 世界で一番、勇気を出した誕生日だった。 世界で一番、自分のことが大嫌いになった誕生日だった。 「(私のどこがダメだったんだろう。癖っ毛?丸い眼鏡?)」 ——つか、これって罰ゲーム? 「(……罰ゲームなんかじゃなかったのにな)」 「(もっと努力して可愛くなれば、自信がつくのかなあ)」 そうしたら次は、好きな人に冷たくされない? 鼻を啜りながら、自転車を一所懸命漕いだ帰り道。 空は暖かみのあるオレンジから、次第に薄暗い鉛色を覆って雨を降り注ぐ。 傘もカッパも持たずに登校したものだから、天気予報くらい見ておけば良かったと後悔したの。 天気予報も見ないくらい、緊張でふわふわ浮かれてた朝の私に、恥ずかしさが込み上げる。 「(菜子(なこ)ちゃんとお揃いで買ったピンクのリップ……。“似合わない”って言われた)」
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