ふたり、ひらり

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神様はイジワルで、私に追い討ちをかけたんだ。 ——ガシャ! 自転車の後輪が心地悪い音を響かせた。 「きゃあっ」 驚いた声と一緒に勢いよく横に倒れた。起き上がってから、体に走る痛みを確認する。 膝がじわじわ痛むけど、よく見たら出血はない。擦っただけみたい。 それから、ゆっくり周りを見た。 夕方の遅い時間のおかげかな。学校の子たちの姿はない。悲しくて恥ずかしい気持ちは回避。 目尻に浮かぶ涙を拭った。 ……ヨカッタ。クラスの子に見られてなくて。 ただ、転倒した目の先にはコンビニがある。雨宿りをしてる雰囲気の人たちがいるのを発見。 一人が私の方へ駆けてきた。 ぺたん、と水溜りの上で座り込んでいると、真上から声が落ちる。悲しい雨の音に混ざる、凛とした低い声色。 「大丈夫?ケガは?……自転車派手に壊れてんな」 「……(あ。紺色のブレザー……同じ学校の人だ)」 これが、望月(もちづき)先輩との出会いだった。 高校一年生の秋雨の出来事。
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