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黒縁の丸い眼鏡、淡いピンクのリップを擦った唇、コンプレックスの癖毛。
ゆらゆら揺れる瞳を赤く腫らした私に映るのは
《美しいは正義》を体現した男子高校生。
艶のある黒髪と、眉下まで伸びている前髪から覗く切れ長の二重。
私とは対照的で、私が持ってないものを全部持ってるみたいな人。
「急に降ってきたから驚いたわ」
「(わ、わ———っ。転んだとこ、見られちゃった…よね?はずかしー…)」
「スマホの降水確率ゼロだったのに。ちゃんと仕事しろよ、ってな」
彼は雨が降る中、傘も持たずに躊躇いなくしゃがんだ。私の顔を見上げる。
「ほら、貸してみ。直すから」
「………っ」
差し出された優しい掌を、そっと受け取った。目尻に溜まった温かい涙が一つ、ころんと落っこちる。
「ありがとうございます」
「いーよ。こういうの得意だから任せな」
ぎこちなく伝えると、大人びた笑みで私を見たの。
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