ふたり、ひらり

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帰り際、望月先輩は「お礼、いらねえから」と言ったけど、私はお礼がしたかった。 どうしたら、望月先輩に話しかけれる機会があるかなあ。 美容院は毎日いるわけじゃないし、学校は……二年の教室に一人で行くのに勇気がいる。 先輩たち、派手だからちょっと怖いもん。……望月先輩も“目立つ先輩”って感じだった。 (あの日、自分は二年生だって教えてくれたの) 待ち伏せってわからないように、自然に会うにはどうすれば……ううーん。 ど、どうしよう。わかんなくなっちゃった。 誕生日ケーキを食べてるときも、お風呂に入ってる間も、部屋でストレッチを頑張ってるときも、スキンケアを念入りにしてるときも、頭の中でぐるぐる悩みが回って。 ベッドで横になる前……机の上にコンタクトを置いた。 ほんとは今日、初めて付ける予定だったの。 眼鏡じゃない蘭子で、当麻くんの隣を歩きたかったけど、朝起きたら怖くなってやめたんだ。 じわり。涙が溢れた。 「(明日こそ、つけよう。ダサダサ眼鏡とおさらばしなくちゃ。らんこ、勇気を持って…大丈夫、私は変わるんだ)」 もう、恋心で泣かないって決めたから。
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