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 地区予選の日はあっというまにやってきた。  俺たちはこの三年間お互いに競争し、高め合ってきた誇りを武器に、順調にトーナメント表の上へと駒を進めた。  そしていよいよ頂点。今日、俺たちは甲子園出場を決める。 「ここが正念場だ! 絶対、甲子園に行くぞ!」 「おう!」  ベンチ前での円陣を終え、俺はベンチの中へ戻る。  三塁スタメンは中洲。そこに異論はない。悔しさも、そりゃちょっとはあるけれど、大したことない。それよりも頼もしさの方が勝る。  なんせ奴は俺が育てた最高の選手だ。あの退部騒動からわずか一ヶ月程度だが、その間俺の持てる全てを注ぎ込み、奴は今や、センス任せのただの天才とはわけが違う。  先発投手は結城。一番、二番と簡単にアウトを奪ったが、三番にセンター前へのヒットを打たれた。  今日の球には好調時ほどのキレが無い。やはり決勝までくると、ここまで投げ続けた疲労があるのだろう。 「大丈夫大丈夫! 締まっていこー!」  ベンチから懸命に声援を送る。  続いて、四番。県内ではナンバーワンの右打者で、プロ注目と名高い猛者だ。  注目の初球。真ん中付近に甘く入った球を、真芯で捉えられた。甲高い金属音とともに火の出るような打球が三塁の中洲を襲う。  が、正面。安心したのも束の間、打球がバウンド後、大きく横に跳ねた。  イレギュラーバウンド! しかし、中洲は予め下に落としていたグラブで対応し、難なく捌いてみせた。涼しい顔でベンチに戻ってくる中洲。俺はグッと拳を握った。
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