時をかけるストーカー

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 アパレルブランド『トライアンフ』の社長令嬢の私、柏原凛音(りお)は生まれながらに全てを持っていたはずだった。  恵まれた容姿に、打ち出の小槌のように出てくるお金。経済的な苦労もなかったし、親が用意してくれた美形の婚約者もいた。私は生まれながの勝者だと自覚していた。だから人に媚びることもなく、好きなように過ごしてきたつもりだ。 ⋯⋯本当に自分の決められた将来を窮屈に思わなかった? 暇すぎるせいか何度も誰かが私の脳内で問いかける。 ⋯⋯私の人生は決められたレールを走っていて、私に自由はない。  でも、私は自分の人生を捧げたいくらい愛する人がいる。それは、婚約者の曽根崎玲ではなく、アイドルのHIROだ。HIROはアイドルグループ『スーパーブレイキン』のセンターで私の神。歌も踊りも上手で、いつも楽しそう。彼を見ているだけで友達が1人もいなくても私の毎日は充実している。 ♢♢♢  今日は私の17歳の誕生日だというのに一人朝食をとる。  母も留守で、父は愛人宅だ。  母自慢の優秀な兄はこの家に愛想をつかせて出て行ってしまった。
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