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石細工
「貫太さん、ここの石はどうするの?」
小夜はばらばらに置かれた石を指差した。
「ああ、この半端ものか? 昔はうっちゃってたんだが、頭が何か使えないかって考えて、今は石細工の材料にしてるんだ」
石積みの里の石は城壁や武家屋敷、神社仏閣の石垣など大きな加工が重宝されている。寸分狂いのない石切りと積み上げの技法を持っているのが強みなのだ。
しかし江戸も中期に入ると、そんな大仕事が次々舞い込むことはなくなった。それに里にはいろいろな事情で現場で働けない者がいた。
そこで頭の指示で、半端ものの石で仏像や縁起物の置物、小さな灯篭などを彫って売り出したところ、これが評判になった。
今では怪我や病気で石切りができない者や、現場を引退した老人達が、鑿や石頭といった道具を手に精を出すようになっていた。
そんな話を聞いてから、小夜は特に半端ものの石を見て回るようになった。
同じ山から採取した石でも、色合いや模様が少しずつ違う。それを発見したらさらに興味が湧いて、似た石と石を見つけて可能なら並べてみたりした。
「小夜、なにやってるんだい。そんな重たい石じゃおはじきはできないよ」
幸はそんなことを言って小夜をからかう。
ところがある朝、その様子に頭が目を留めた。
「お小夜ちゃん、石がわかるのかい?」
「え?」
小夜は言葉の意味がわからない。
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