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ツギハギだらけ
他人を被る。そうやって私は生きてしまっている。それは神様がくれた奇跡? そんなことを思いながら学校へ向かっていると、遠目ながら大好きな人の姿が視界に入った。
朝から眼福だと胸が高鳴るも、興奮した様子は抑えて駆け寄る。
「おはようございます」
顔を合わせるや否や普段よりもワンオクターブ高い声で挨拶。自分なりに精一杯の笑顔を咲かせると、彼もまた浮かない表情でぎこちなく笑ってみせる。
こんな当たり前のように彼の隣を歩けることが今はとてつもなく嬉しい。無条件に同じ空気が吸えて、景色を共有している。今までこんな現実はありえなかったし、一方的な気持ちは胸に秘めたままだった。
でも、状況が変わった。会話は少ないし気まずい空気になることもあるけど、彼は私を拒絶しない。できるわけがないのだから。
私は静かに微笑し、彼との登校に独り幸福を感じていた。
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