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「流れる道」
夫が、続けざまに「ごめんな。話していたせいでだいぶ夜が遅くなってしまった。
まあ、大事な話をしていたからこそ時間を忘れていた部分もあるけどな。俺は、先に2階行ってるよ。おやすみ。」 夫は、苦笑交じりにそういったので、私も、おやすみなさいと答え夫が階段をのぼりきった音をきき終えた後、やっと安堵をした。
私は、静けさが漂うリビングの中何ともいえない交差した感情に囚われた。
全く、冷静ではいられない。
実をいうと本音はそれだった。
夫が仕事を辞めても支えたいという気持ちはもちろんあるが、ましてや、まだ中学生にもならない子ども。私達の大切な娘がいるのだ。その子をどう養うのだろう。
もしや、辞職後の転職先のあてがあるのか、それとも夫が家事を担当し私が一家の大黒柱になれというのだろうか。
どちらにせよ、話があまりにも急すぎる。
どうして、このタイミングで仕事を辞めてしまうのか。せめて、あと何年かは我慢してくれといえば良かった。と、私に後悔がひしひしと迫ってくる。
だが、そんなことを無下に言えば、夫が逆上するかもしれないし、夫が辛かったのも事実であり、夫自身の意志も固い。
私は、様々な不安が渦巻くままそれを心にとどめておくことにした。
やり場のない気持ちをむねにしてその日は朝まで浅い眠りについた。
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