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「ああ!くそったれ!この馬鹿野郎め!」
豪奢な屋敷のバスルームで、やつれた男が、鏡に映る自分に向かって叫んだ。
「ちくしょう…こんなの無茶だ!あの詐欺師め!」
そう叫ぶと男は拳で鏡を殴りつけた。ヒビが入った鏡に映った自分の姿が、あまりに滑稽で泣き崩れる。
「俺は……オマエは、なんであんなモノを買ったんだ……ちくしょう!」
男は高熱で朦朧としながら立ち上がり、シンクに並ぶブランド物の香水やら何やらを手で払って床にぶち撒けた。
すると一緒に床に落ちたデジタル式置き時計のライトが灯り、23:50を表示していた。
それを見た男は悲壮な表情になり、割れた鏡に映る自分に再び向き合った。
「おい!もう時間がない!何とかしてくれ!なあ!頼むよ!」
彼がなぜ、こんな奇妙な行動をとっているのか。
——時を遡ってみよう。
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