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 笠倉ひよりは関の言葉でだんだんと自信がなくなっていった。それでもひよりは心の中で葛藤していた。別れた方がいいのか?今なら引き返せるでも、家では父に「お前は遊ばれてるんだ女性を一人で返すろくでもない男しかお前には寄ってこないお前みたいなのは遊び半分で付き合うにはちょうど良い女だおれは男だからわかる遊びには良い女だ」自分の娘に仕事から帰ると毎日のように父は言い続けた。  ひよりは悔しくて悲しくてもう、いっぱいいっぱいで心が壊れそうだった。  ひよりは、関さんと別れたらもっと酷い事をお父さんは私に言うだろう。やっぱり別れた遊び半分のどうしょうもない女だと、今度は毎日言い続けるだろう。  もう、ここにいたくない笠倉家の長男だと言って弟しか可愛がらない両親弟にまで私にに暴力を振るわせる父親、そして母親も父に洗脳されて私に暴言暴力を振るう……もう、私の居場所はない。 結婚して出て行くしか私の居場所はない。 でも関さんと結婚を考えてもいいのだろうか?当時はアパートも保証人がいないと借りる事はできなかった。 ここから逃げたい。誰か助けてひよりの言葉は誰にも通じる事はなかった。  当時は今ほど虐待の認識がなくひよりは我慢するしかなかった。 友人に話しても「親に叱られただけでしょう?暴言?大袈裟なそんな親なんている筈ないじゃない 親は無性の愛で鬱陶しい事もあるけど子供を傷つける事はしないよ」これが友人に相談した時の言葉だった。 今なら相談するところに相談できた事も当時は相談する場所さえなかった。 親の言う事を聞くのが当たり前、親が全て正しい。親なら子供を傷つけてもいいそんな風習があった時代、誰もひよりの相談にのってくれる人はいなかった。  家にいる事が嫌なひよりはだんだん外で友人達と飲み歩くようになっていった。 そんなある日だった。笠倉ひよりはいつものように職場に出掛けた。「おはようございます」会社の人に挨拶をすると周りの様子がおかしかった。 どうしたんだろう?皆んな私の方を見てこそこそ話してる?えっなんか職場のおばさんに指さされた?その時、すれ違いざま先輩がひよりに言った。  「可哀想にねー笠倉さん」「まだ気づいてないのかしら?」「関さんが笠倉さんと遊び半分で付き合ってるって事?」「私も聞いたわまだ若いから振ると可哀想だから付き合ってあげてるとか関さん言ってたわ」「もてあそばれてるんだよ」 ひよりの耳に口々に会社の同僚が話している声が聞こえてきた。  「えっ?もてあそばれてる?」 その時、いつもひよりと飲みに行ってる先輩がひよりの側に来た。  「ちょっと笠倉さんこっち来て」 ひよりは先輩に呼ばれた「なんか関さんが皆んなにひよりちゃんとは結婚する気ないね。入社してまだ2年で新人だから俺の事好きみたいだから付き合ってやった。新人なのにいきなり振って会社来なくなると困るじゃんだから付き合ってやってるんだよ」って朝私が来たらさー皆んなに言ってたよ。あー言う人と付き合わない方がいいんじゃない?」 ひよりはそんな事を会社で言いばらすなんてどう言うつもりでどんな場面で人を罵る事を言ったのか?一度事の真相をはっきり関さんに聞いてから距離を置いた方がいい。流石に付き合うのをやめた方がいいんじゃないか?ひよりは次の休みの日に関を呼び出して話を聞くつもりでいた。 仕事をしながらひよりは思った。たぶん関さんが言ったんだ。  渡部さんの時のように。関さんは何も考えないんだ。人の気持ちがわからないんだ。  この前は自分の弟に私を紹介したのにあれはなんだったんだろう?関は本心で皆んなに言ったのか?結婚したくない仕方なく付き合っているとしたらもうこれ以上付き合えない。あまりにも酷すぎる。ひよりは涙を堪えながらその日、仕事をしていた。  家に帰ってひよりは一人で泣いていた。 いくら泣いても心の傷は癒える事はなかった。
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