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再会
他国との交流がなくなり15年
海に囲まれた国土のお陰もあり 結界を張った国土は他国からの侵入を防ぎ
その時間だたつにつれ人々の黒髪魔女の関心も薄れていった
魔法道具の技術も向上して 東の帝国で編み出した道具と魔法陣により
魔法石に魔力を封じたまま加工することが可能になり
各国で魔法石を使った作業が盛んになったことも
アンダーミヤ国の侵入を防いだのかもしれない
黒髪の魔女の力を使い 魔法石使用で国は発展進化して行った
国の人々は 不安も不満もなく 幸せに暮らしていた
たった一人を除いて
アリーシャ22歳 漆黒の髪が腰まで伸び艶やかで美しく
その黒髪が映える透き通った白い肌 モチモチとした肌触り
瞳はルビーのように透明な赤い輝き 唇はピンクに薄く色づく
15年の月日が少女を大人の女性へと変えていた
自然豊かな大地を 颯爽と馬を走らせて
お気に入りの場所に辿り着くアリーシャ
展望台から見る水平線 その風景を見るたびに
いつかはこの国を出て 多くの国を見てみたい
そう熱望し続けたアリーシャ 好奇心旺盛でまだ見ぬ世界に憧れを抱き
そう過ごしてきたが 15年未だ叶うことがない
そんなアリーシャも22歳を迎えた
国王と王妃からは 結婚相手は国内の男性であれば誰でもいいなどと言われ
ているが未だ相手も見つからず 結婚適齢期を過ぎ 本人はこのまま国王になる王子(弟)に面倒を見てもらおうと目論んでいた
「アリーシャは 本当に海が好きですね」
そう話しかけてくる人物 アリーシャの幼馴染の騎士団副隊長 トラジェ
アリーシャを一番側で見守ってきた 15年前の悪夢の時はまだ幼く
父親の腕の中で アリーシャを助けることが出来ず 見つめることしか出来なかった
国王も王妃も 願わくば騎士団副団長のトラジェに愛娘を嫁がせたいと思っているが アリーシャにはその気がなくいつもはぐらかされている
それでも トラジェはそばにいられるだけで幸せだと感じこの関係を続けている
「トラジェ 私いつかはこの国を出てみたいの そしてこの目で
この国にないものをたくさん見てみたい」
「お父様が他国との断絶をしてまで守っているものを知っているけど
それでも あの海の向こうへ 行ってみたいの」
そう話すアリーシャの瞳は 希望に輝きを満ちていた
この国で過ごしこの国の素晴らしさを誰よりもわかっているが
まだ知らぬ世界への憧れを捨てられずにいた
王都に戻り 夕食前に時間があるからと 街で人々と交流するアリーシャ
王都には アリーシャと同じく黒髪の女性が多く見られていた
その中でもアリーシャ髪が一番美しく輝いていた
いつものように時間まで王都の街で 人々と交流し城に戻ると
その後は家族と談笑しながら食事をとる
いつもと何ら変わりない時間が過ぎていった
ただ一つ 数年ぶりの深黒の夜を迎えるまでは
アリーシャは この深黒の夜になる度に 悪夢の夜を思い出す
忘れようのない 人々の悲鳴や魔獣の奇声が耳元で聞こえ
目を開けても瞑っていても あの時の光景が目に浮かぶ
目の前に手を広げれば 赤く染まった両手が見え
息を吸いたくても上手く吸えなくて だんだん意識が朦朧としてくる
この深黒の夜は いつもの何倍も夜の長さを感じさせた
「眠れない、、、」
「月も星の光もない、、、」
眠れぬ夜を 窓際に手を添えて 深黒の外を眺めていた
「えっ」
あの日が蘇るように 深黒の夜空に黄金の移動魔法陣が何十も現れた
息が止まるほどの衝撃 また繰り返される悪夢 息を飲みこむ
この国は 黒髪の魔女の結界で守られているはず
結界を通り越して移動魔法陣を作るなんて並大抵な魔力の持ち主じゃないと出来ないはず そう思った瞬間その移動魔法陣から現れたのは 騎士の格好をしている人間だった
あんな人数の移動見たことがない しかもあの制服の紋章は
以前王国図書館で見たことがある 東のハンガオグ帝国のガエシア騎士団
皇帝直結の精鋭隊
でもなぜここに 夜空から現れた騎士団はそのまま 中央王宮に
「お父様とお母様が危ない」
アリーシャは着替えもせず 寝巻きのまま裸足で走り出す
息を切らしながら
中央王宮には アンダーミヤ国の騎士団が常駐しているだけど
この国は他国との戦争の経験は皆無だ そのため戦いなんて慣れてない騎士団に領土を広げながら侵攻している東の帝国の騎士団にかなうはずが無い
アリーシャが中央王宮に着いた頃には
お父様とお母様そして王子(弟)騎士団たちが囚われの身となっていた
人質を囲みながら 東の帝国の騎士団が 剣をむけていた
「お父様 お母様」
「お前たち何をしてる」
アリーシャの声が響く
囚われの身となっている家族のそばに駆け寄り その輪に入ろうとした時
思いっきり腰に手を当てられ腕を掴まられて引っ張られる
アリーシャを受け止めた騎士はそのまま キツく抱きしめはじめ
拘束されていたトラジェが 大声で
「王女様から離れろ」
そう叫んでも離れることはなかった
アリーシャはキツく抱かれ
何度も「会いたかった」と聞きながら
その暖かい声に顔を上げてみると見覚えのある面影が
15年前 あの悪夢の夜に一緒にいた東の帝国第二王子 ガーラだった
アリーシャが見上げるくらい背は伸び 透き通るくらい綺麗な銀髪
パープルの瞳は 宝石のように輝き
整った肉体が しっかりとした男性の体格となっていた
「ガーラ様?ガーラ様がなぜこちらに?」
先ほどまでの恐ろしい恐怖が和らぎ 懐かしさが溢れてきた
自然と笑みが溢れ 大人の男性となったガーラに問いかける
「少し待ってて下さい」
そうアリーシャの耳元で囁き キツく抱きしめていた手を緩めたそれでも
腰に回した手の力は緩めず
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