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夜間の工事中
――あの日も、いつもと変わらぬ蒸し暑い夜だった。
日中の仕事と掛け持ちしていた夜間の交通誘導。滴る汗を拭いながら、俺は時折やって来る車に赤く光る誘導棒を振り、工事中の道路だという注意を促していた。
休憩時間はあるものの、ずっと立ちっぱなしで足はパンパンだ。日中はラーメン屋で働き、退勤後は夕飯とシャワーをする為だけに自宅へ戻り、それが済めばすぐにこの現場へと向かう。
金を稼ぎたくて、毎日がむしゃらに働いた。
「航太郎、大丈夫か?」
少し先から爽やかな笑顔で声をかけてきたのは、櫻木さんだ。俺より7つ年上の現場監督で、落ち着きがあって俺みたいなバイトにも声をかけてくれる、優しくて頼りがいのある兄貴的存在だ。確か1児の父親だったと思う。
「櫻木さん! お疲れ様です。大丈夫ッス!」
週の後半、疲れてないと言ったら嘘になるけど、俺の唯一の長所は「元気」な事だ。
ラーメン屋で鍛えられた大きな声に、櫻木さんは可笑しそうに笑った。
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