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だけどいつしか進む道を変えたようで、美しいドレスを着た新婦に寄り添う仕事に落ち着いたのだった。
「うーん、こんなとこかなぁ。お会計はよろしく」
俺は封筒に入れたままの3万円から支払った。後に購入したワンピース代を含めても手元にお金は残ったので、内心ホッとした。
姉は俺の懐事情も考慮してくれていたのかもしれない。
***
途中ファストフード店に寄って少し遅めの昼食を食べた。こうして二人だけで食事をするのは稀だったけど、久々の再会に会話が止まることはなかった。
それから姉の家へ戻ると、さっそく姉はウェディングドレスの製作に取りかかった。俺は微力ながらも助手として、姉に指示されるがままに忙しく働いた。その様子はまるで敏腕外科医と助手のようだった。
「グルーガン!」
「えっと…これか、はい!」
スティック状の樹脂を熱で溶かし接着する道具を姉に手渡した。小型の銃のような、SFの世界なら銃口からレーザービームでも出てきそうな、そんなアイテムだ。
ガキの頃の俺なら、確実にこれで遊んで叱られたに違いない。
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