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古びた木製の扉を開けると、そこは色とりどりの花で溢れていた。
紫のラベンダー、赤い薔薇、黄色いひまわり、青い忘れな草など 瑞々しい花々が、そよ風に優しく揺れている。
「いらっしゃいませ」
カウンターの向こうから、穏やかな笑みを浮かべた女性が声をかけてきた。
白いエプロンを身につけ、髪にはピンク色の薔薇を飾っている。
「ここは ───」
私は驚きで言葉を失っていた。
「ここは花魔法のお店、『フルールル』よ。どんな願いも、花で叶えてあげる」
彼女はそう言って、カウンターに並べられた花々を指差した。
私は恐る恐る、赤い薔薇を手に取った。
「この花は ───」
「それは、愛の花。大切な人に贈れば、あなたの想いはきっと伝わるわ」
女性の言葉に、私は顔を赤らめた。
「あの… 実は、好きな人がいるんです。でも、なかなか気持ちを伝えられなくて ───」
「そうなのね。だったら、この薔薇を贈って、あなたの気持ちを伝えてみましょう」
女性は優しく微笑み、薔薇の花束を作ってくれた。
私は勇気を振り絞り、その花束を好きな人にプレゼントした。すると、彼は驚きながらも、満面の笑みで受け取ってくれた。
「ありがとう」
そう言って、私の手を握りしめた。
それから私たちは、花魔法のおかげで結ばれることができた。
後日、私は再び『フルール』を訪れた。
「あの時は、本当にありがとうございました」
深々と頭を下げた。
「どういたしまして。あなたたちが幸せそうで、私も嬉しいわ」
彼女はそう言って、私に一輪の白いユリをプレゼントしてくれた。
「これは ───」
「それは、純粋な心の象徴。これからも、その心を大切にして生きていくのよ」
私はユリの花束を胸に抱き、店を後にした。
花魔法は、確かに存在した。
それは、人の心を動かし、奇跡を起こす力を持った魔法だった。
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