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春の息吹が、まだ冷たい風と共に街を巡り始めた頃。小さな花の苗を大事そうに抱えた少女、リリィは、魔法学園の門をくぐった。
彼女は、代々続く花魔法使いの家系に生まれた、期待の新入生だった。
リリィの家系は、花々を操り、人々を癒やす魔法を得意としていた。
しかし、リリィは生まれつき魔法の力が弱く、どんなに練習しても、花を咲かせることすらできなかった。
そのため、周囲の期待とは裏腹に、彼女は自信を失い、魔法学園への入学をためらっていた。
入学式の朝、彼女は祖母の遺した古い魔法書を開き、そこに記された言葉を胸に刻んだ。
「花の声を聴きなさい。
花は、あなたに語りかけます」。
学園での生活は、リリィにとって刺激的だった。
魔法薬学、魔法生物学、魔法史。
様々な授業を通して、彼女は魔法の世界の奥深さを知った。
そして、花魔法の授業では、様々な花言葉や、花に宿る精霊の存在について学んだ。
ある日、リリィは学園の温室で、一輪の枯れかけたバラを見つけた。
そのバラは、かつて学園で最も美しい花を咲かせていたという。
リリィは、そのバラにそっと手を触れ、心の中で語りかけた。
「どうしたの?
なぜ、こんなに元気がないの?」
すると、不思議なことに、リリィの心に、かすかな声が届いた。
「─── 水が ─── 欲しい……」
リリィは、すぐにジョウロでバラに水をやった。
すると、バラはみるみるうちに元気を取り戻し、美しい真紅の花を咲かせたのだ。
彼女は、初めて花の声を聴き、花と心を通わせることができたのだ。
この出来事をきっかけに、リリィの魔法は開花し始めた。
彼女は、花の声に耳を傾け、花々の願いを叶えることで、様々な魔法を使えるようになっていく。
花を咲かせるだけでなく、花を操って物を動かしたり、花から癒やしの光を放ったり、さらには、花びらで幻を作り出すこともできるようになった。
リリィは、その力を活かして、人々を助けたいと願うようになった。
彼女は、学園を卒業後、花魔法使いとして、世界中を旅した。
枯れた大地に花を咲かせ、病に苦しむ人々を癒し、争いの絶えない地域に平和の花を届けた。
そして、リリィは、いつしか「花の魔法使い」として、世界中の人々に愛されるようになった。
彼女は、花を通して、人々に笑顔と希望を届け続けた。
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