【プロット:ファンタジー】リリィ

1/1
前へ
/1ページ
次へ
春の息吹が、まだ冷たい風と共に街を巡り始めた頃。小さな花の苗を大事そうに抱えた少女、リリィは、魔法学園の門をくぐった。 彼女は、代々続く花魔法使いの家系に生まれた、期待の新入生だった。 リリィの家系は、花々を操り、人々を癒やす魔法を得意としていた。 しかし、リリィは生まれつき魔法の力が弱く、どんなに練習しても、花を咲かせることすらできなかった。 そのため、周囲の期待とは裏腹に、彼女は自信を失い、魔法学園への入学をためらっていた。 入学式の朝、彼女は祖母の遺した古い魔法書を開き、そこに記された言葉を胸に刻んだ。 「花の声を聴きなさい。  花は、あなたに語りかけます」。 学園での生活は、リリィにとって刺激的だった。 魔法薬学、魔法生物学、魔法史。 様々な授業を通して、彼女は魔法の世界の奥深さを知った。 そして、花魔法の授業では、様々な花言葉や、花に宿る精霊の存在について学んだ。 ある日、リリィは学園の温室で、一輪の枯れかけたバラを見つけた。 そのバラは、かつて学園で最も美しい花を咲かせていたという。 リリィは、そのバラにそっと手を触れ、心の中で語りかけた。 「どうしたの?  なぜ、こんなに元気がないの?」 すると、不思議なことに、リリィの心に、かすかな声が届いた。 「─── 水が ─── 欲しい……」 リリィは、すぐにジョウロでバラに水をやった。 すると、バラはみるみるうちに元気を取り戻し、美しい真紅の花を咲かせたのだ。 彼女は、初めて花の声を聴き、花と心を通わせることができたのだ。 この出来事をきっかけに、リリィの魔法は開花し始めた。 彼女は、花の声に耳を傾け、花々の願いを叶えることで、様々な魔法を使えるようになっていく。 花を咲かせるだけでなく、花を操って物を動かしたり、花から癒やしの光を放ったり、さらには、花びらで幻を作り出すこともできるようになった。 リリィは、その力を活かして、人々を助けたいと願うようになった。 彼女は、学園を卒業後、花魔法使いとして、世界中を旅した。 枯れた大地に花を咲かせ、病に苦しむ人々を癒し、争いの絶えない地域に平和の花を届けた。 そして、リリィは、いつしか「花の魔法使い」として、世界中の人々に愛されるようになった。 彼女は、花を通して、人々に笑顔と希望を届け続けた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加