【プロット:ファンタジー】花咲屋

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春の息吹が、まだ冷たい風と共に街を巡り始めた頃。小さな花の苗を売る店「花咲屋」に、一人の少女が訪れた。 名前はリリィ。透き通るような白い肌に、夜空を映したような青い瞳を持つ、12歳になる少女だ。 リリィは、店の奥に並べられた色とりどりの花々に見惚れていた。 赤や黄色の鮮やかな花、紫や青の神秘的な花、そして、白く可憐な花。 その一つ一つが、まるで生きているように輝いて見えた。 「いらっしゃいませ」 優しい声に振り向くと、カウンターの奥に、穏やかな笑みを浮かべた老婦人が立っていた。 花咲屋の店主、フローラである。 彼女は、リリィの瞳に映る好奇心を見逃さなかった。 「何かお探しですか?」 リリィは、少し恥ずかしそうに、小さな声で答えた。 「あの…花魔法って、本当にあるんですか?」 フローラの笑顔は、さらに深まった。「ええ、もちろん。花魔法は、この世界に生きる全ての命を繋ぐ、優しい魔法です」 リリィは、目を輝かせた。 彼女は、幼い頃から花魔法に憧れていた。 花を咲かせ、人を癒し、心を繋ぐ魔法。いつか自分も、そんな魔法を使えるようになりたいと夢見ていたのだ。 フローラは、リリィに一鉢の花を差し出した。 それは、白い花びらに淡いピンクの縁取りがされた、可憐な花だった。 「この花は、『願いを叶える花』と言われています。大切に育てれば、きっとあなたの願いを叶えてくれるでしょう」 リリィは、花を受け取ると、胸が高鳴るのを感じた。 彼女は、この花を大切に育て、いつか花魔法を使えるようになると心に誓った。 それから毎日、リリィは花に水をやり、話しかけ、愛情を込めて育てた。すると、不思議なことに、花は日に日に大きく、美しく成長していった。そして、リリィの13歳の誕生日。花は、満開の花を咲かせた。 その瞬間、リリィは、体の中に不思議な力を感じた。 それは、温かく、優しい力。リリィは、直感的に理解した。 これが、花魔法の力だと。 リリィは、花に向かって優しく語りかけた。 「私の願いを叶えて」 すると、花びらから、淡い光が溢れ出し、リリィの体を包み込んだ。 リリィは、目を閉じ、心の中で強く願った。 「世界中の人々が、笑顔で幸せに暮らせますように」 光が消えると、リリィの手には、小さな種が握られていた。 リリィは、その種を庭に蒔き、水をやった。 すると、種はみるみるうちに芽を出し、成長し、美しい花を咲かせた。 その花は、リリィが見たこともない、不思議な花だった。 花びらは七色に輝き、甘い香りを漂わせている。 リリィが花に触れると、花びらから光が放たれ、リリィの心を満たした。 リリィは、この花が、人々に幸せを運ぶ花だと確信した。彼女は、この花を「希望の花」と名付け、世界中に広めることを決意した。 リリィは、希望の花の種を、多くの人々に分け与えた。 そして、人々は、リリィの願いに応えるように、希望の花を大切に育てた。 希望の花は、世界中に広がり、人々の心を癒し、笑顔を咲かせた。 そして、リリィは、花魔法を使って、人々を幸せにする「花の魔法使い」として、長く語り継がれるようになった。
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