ちょこ走る

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自室は鍵もかかる、習慣でしっかりかける。 ブレザーの制服を脱いで部屋着のスェットの上下になってから、通学鞄を 開けて、日記帳を出す。 開けてみると『ちょこ』と名付けられた生き物はノートの端から端までを ちょこちょこと移動している。 僕はノートを開いた状態で勉強机の上に置いて、ノートにチョコレートを 乗せてみた。 ちょこがピクリと止まり、サッサッと動いてからチョコレートに近づいた。 「うわあぁーっ!!」 チョコレートが吸い込まれるようにノートの中へと消えた。 ちょこが顔らしき部分だけを大きくして動かしている。 チョコレートを食べているのだ。 そして食べ終わると機嫌よさげに小走りした。 「お兄ちゃーん、どうしたのー?」 階段を駆け上がる音と裕の声がした。 「なんでもない、チョコ食ったら鼻血でた」 「うさんくさーい、どうせエッチな雑誌とか見たんでしょーっ」 「それで鼻血とかも学習してんじゃねーよ!」 「ねえ、お母さん帰ってくるまで下にいてよ、一人だと不安で......」 「家の中は大丈夫だよ」 「そうだけどさー」 と、階段を降りていく音がした。 ブラコンではない、裕は、ある悩みを抱え込んでいる。
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