ちょこ走る

「お兄ちゃーん、お母さん帰ってきたよー、今日はピザだってさ」

「うっそ、マジか！」

ノートを閉じて部屋を出て階段を降りた。

金曜日の夕飯だけは、母さんはつくらなくていい決まりだ。
それで近くのスーパーではなく、遠くのデパートに買い物して
帰ってくるから遅いわけだ。

「飲み物も買ってきちゃった」と、炭酸ジュースを渡された。
リビングのテーブルに広げて、大好物のシーフードピザを頬張る。

「裕、あのチョコレート、もうちょっともらってもいいかな？
足りなくなったら、僕が買いにいくからさ」

「お兄ちゃん、また鼻血でちゃうよ」

「でねーよ！」

ピザを早食いして立ち上がり、キッチンの冷蔵庫からチョコを出す。
今度は多めに、いや、このさいだから全部！

「えー、ひどーい！」

「明日、すぐ買いに行ってやるよ、近くのスーパーで買えるだろ？」

「もうっ！せっかく痩せてるのに、太り過ぎても知らないからね！」

「ひと晩でそんなに太らねえよ」

太らせてみるつもりだけどな。