ちょこ走る

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電車で座っていた女の子が立ち上がったとき、座席にノートが落ちた。 「あの、これ、落としましたよ!」 駅に着いて開いた電車のドアに向かう彼女へと、ノートを拾い上げて 僕は言った。 彼女が振り向いて怯えた目をした。 男だからと警戒されただろうか? 制服からして同じ高校ではない、それだけはわかった。 「それ、あげます」 女の子が言った。 「は?」 女の子は急いで電車を降りていく。 「あなたにあげる、中身ごと」 「はあ?」 電車のドアが閉まって動き出して、呆然と立ち尽くす僕を、進む振動が 激しく揺らした。
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