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「じいじ、ありがとう!!」「困ったことがあったらなんでも言うんだよ。」「うん!」
父から、今日突然『ミニトマト育てないか?』とメッセージが来た。久しぶりに実家に戻ってみると、もうかなりのおじいさんとおばあさんになった両親がいた。「なんでミニトマトなの?」「ん?だって子供好きだろ?あと丁度苗があまっちまっててな!」あぁ、もう能天気なんだから。まあ子供も喜んでるしいいか。「じいじー遊ぼー!」あぁ!もう時間だから帰るよー「えぇー、やだやだ」ダメって言っても、明日は保育園でしょ?ママのお仕事もあるの。だから帰るよー「うわぁーん、まだ居たいよー」「ははは、そんなに気に入ってくれたのか、嬉しいなぁ、じいじがいる間ならいつでも来ていいからな。だからもう帰りな」「ふえぇーん」ほら!帰りにお菓子買お!「わーい!じゃあまたねーじいじ」今日はありがとう、じゃあまた「うん…また」この声が最後になるとは知らずに…
額縁に飾られている父は、はにかむような優しい笑顔を浮かべている。喪服に身を包んだ人たちはみな暗い表情を浮かべている。夫は娘の様子を見てくれている。実家に帰って、母に呼び出された。「これ、お父さんがあなたにって、遺書ではないらしい」え?「よくわからないんだけど…」便箋から出して見てみると、一言だけこう書かれていた「ありがとう」鼻の奥が痛い。目に涙が込み上げてくる。父との様々な思い出でが蘇ってくる。初めて自転車に乗れた時。初めて習字で賞を取った時。初めて受験に合格したとき。父は私の心が折れかけた時にいつも側にいてくれた。「大丈夫だ、お前ならできる」この言葉に何度救われたことか。堪えきれずに私の目から大粒の涙がぽろぽろと流れてくる。いつの間にか母も一緒になって大号泣していた。
父がこの世を去ってから2ヶ月。貰ったミニトマトの苗は青空の下、青々としげっている。
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