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藤崎史人(ふじさきふみと)は小学校3年生。勉強熱心で、みんなから信頼されている。期待を受けると、もっと頑張ろうという気持ちになる。そのために、史人は学校帰りにいつも塾に通っている。
史人は今日の学校を終えて、帰ろうとしていた。だが、家にはまだ帰らない。塾がある。期待に応えるために一生懸命頑張らないと。そのため、史人はテレビゲームをあんまりした事がない。両親が勉強熱心で、テレビゲームは1日1時間と決めている。史人は厳しいと思っているが、自分の将来のためだと思って受け入れ、命令を聞いている。
「おーい、史人」
史人は友達に呼び止められた。こんな事は初めてだ。これから塾に行こうとしているのに、どうしたんだろう。
「どうした?」
「こっくりさん、やろうぜ」
こっくりさん? あの変な遊びかな? 史人は少し知っていた。確か、呪われるとか言われている。史人は怖いと思っている。こんなのやったら大変な事になるに違いない。やりたくない。だけど、友達がやろうと言っているんだ。誘いは断れない。だけど、やりたくない。
「えっ、危ないよ」
「いいじゃん!」
だが、友達はやろうと誘っている。これは断れない。
「わ、わかったよ・・・」
史人は教室に入り、椅子に座った。そこには、紙切れと十円玉がある。これを使ってこっくりさんをするようだ。
「指を置いて!」
「うん」
史人と何人かの友達は人差し指で十円玉を押さえた。
「こっくりさんこっくりさん、おいでください」
すると、十円玉が『わかりました』の文字に動いた。こっくりさんが来たようだ。
「来たのか・・・」
「そうみたい」
彼らは緊張している。こっくりさんは見ないが、そこにいる。みんなそんな気がしてしょうがない。史人は思った。こっくりさんって、何者だろう。どんな見た目だろう。気になるな。
「こっくりさんこっくりさん、おいでになりましたら、返事ください」
十円玉は『はい』に動いた。
「いるみたいだな」
彼らは汗をかいている。もう冬が近いというのに。
「こっくりさんこっくりさん、食べたいものはありますか?」
すると十円玉は『きつねうどん』と動いた。きつねうどんが好きなのか。やっぱりお揚げが好きだから食べたいんだろうか?
「きつねうどんだって」
史人は少し笑った。まさか、こっくりさんは狐の妖怪だろうか?
「なかなか面白いな」
「ほら、史人も質問してみろよ」
史人は戸惑っている。だが、答えないと。何にしよう。史人は少し考えた。
「わかったよ。こっくりさんこっくりさん、好きな人ができるにはどうすればいいですか?」
すると、十円玉は『いっしょにあそぶ』と動いた。史人も夢中だ。呪われると言われているけど、なかなか面白いじゃないか?
「一緒に遊ぶのか」
しているうちに、徐々に飽きてきた。早く塾に向かわないと、先生に怒られる。
「そろそろやめようよ」
「だめ、離したら呪われるよ」
だが、離す事はできない。離したら呪われるというのだ。終わるには、おかえりくださいとお願いするという。
「うーん・・・」
彼らは、こっくりさんに帰ってもらう事にした。
「こっくりさんこっくりさん、お帰り下さい」
だが、十円玉は『いいえ』に動く。まだ終われない。どうしよう。帰ってくれない。
「どうしよう、帰ってくれない」
「うーん・・・」
史人はもうやめようと思い、人差し指を十円玉から離した。みんなは驚いている。史人は呪われるのでは? 不安が頭をよぎる。
「もうやめようよ」
「あっ、離した!」
みんなな唖然としている。だが、史人は冷静だ。
「もう知らないよ」
「バイバーイ」
史人は帰っていった。みんなはその場でじっとして、史人を見ている。
「帰っちゃった・・・」
史人は知らなかった。その夜、とんでもない事になっているとも知らずに。
午後7時過ぎ、史人は家に帰ってきた。いつもこの時間帯に帰るのが普通だ。夜道は危ないけれど、気をつけて帰らないと。史人は玄関から漏れる明かりを見た。それを見るたびに、家族のぬくもりを感じる。そこに家族がいてくれる。それだけで気持ちがほっとする。どうしてだろう。史人にはわからない。
「ただいまー」
「おかえり、ってあれ? 今さっき帰ってこなかったっけ?」
史人は戸惑った。いつものように塾に行ったのに、行かずにまっすぐ帰ってきたと思われているとは。どうしてだろう。
「えっ!?」
「塾に行かずに帰ってきたので、おかしいなと思ったんだけど」
史人は首をかしげた。本当に塾に行っているよ。どうして帰ってきたと言えるんだろうか?
「普通に塾に行ってたって。友達に聞いてみてよ」
母も首をかしげた。いつものように塾に行っていたとは。じゃあ、あの時帰ってきた史人は偽物だろうか?
「そう・・・。史人の晩ごはん、食べて行って、2階に行ったんだけどね」
確かに帰ってきている。でも、2階に行ったらしい。じゃあ、その偽物らしき奴をボコボコにしてやる!
「見てきてよ」
「わかった」
母は2階に向かった。その後姿を見て、史人は首をかしげている。あの時帰ってきた自分は、いったい誰だろう。全く見当がつかない。そっくりさんだろうか? この辺りに、自分によく似たそっくりさんがいるんだろうか?
母は2階にやって来た。だが、そこには誰もいない。母は再び首をかしげた。確かに2階に行ったのに、どうしていなくなったんだろう。まさか、本物の史人が帰ってきたのを知って、逃げたんだろうか?
「あれ!?」
母は部屋に入ったが、そこには誰もいない。明かりが消えている。
首をかしげて、母が戻ってきた。母は戸惑っている。何かがあったんだろうか?
「いないわ。ごめんね。もう晩ごはんなくなっちゃったから、カップ麺買ってきてあげるね」
いないだと? どこに逃げたんだろうか? 史人は拳を握り締めている。
「ありがとう」
母は近くのコンビニに向かった。そんな予定はなかったのに、もう1人の史人、おそらく本物と思われる史人が帰ってきたから、買ってこよう。
史人は2階に向かった。史人は一度、後ろを振り返った。だが、誰もいない。
「うーん・・・」
史人は2階の部屋に戻ってきた。やっぱりそこには誰もいない。いつもの部屋だ。一体そこにいたのは、誰だろう。
「おかしいな・・・」
史人は机に座って、勉強を始めた。母が帰ってくるまで、勉強を頑張らないと。
20分ぐらい経って、玄関が開く音が聞こえた。母と思われる。
「ただいまー」
「おかえりー」
その声を聞いて、史人は1階にやって来た。確かに母だ。母はカップのきつねうどんを持っている。
「ごめんね、3分待ってね」
「うん」
母は電気ポットのお湯をカップのきつねうどんに注いだ。史人はその様子を見ている。
3分が経ち、きつねうどんができた。やっと晩ごはんが食べられる。
「できたわ」
「いただきまーす」
史人はきつねうどんを食べ始めた。だが、史人は浮かれない。いったい、あいつは何者だろうか? あいつはどこに消えたんだろうか?
「晩ごはんがこれで、ごめんね」
「いいんだよ。それにしても、あいつは誰だろう」
史人は怒っている。こいつ、見かけたら絶対にボコボコにしてやる! 母はその様子を見て、そいつがまた出たら、ひっぱたいてやろうと思った。
「そうだね」
母は決意した。明日、あいつに問い詰めてみよう。
翌日の放課後、史人は思った。あいつは誰だろう。絶対に突き止めてやる! 今日は塾を休んで、まっすぐ帰ろう。そして、俺の偽物をボコボコにしてやるんだ!
「どうしたんだい?」
何かに怒っているような表情の史人を見て、友達はおかしいと思った。何に怒っているんだろう。話してほしいな。
「今日は変なんだよね」
「どうしたの?」
史人は普通のように思っている。友達は首をかしげている。
「偽物が僕の晩ごはんを食べていくんだ」
史人の偽物? そんな奴がいるとは。今日は普通に帰ってきて、そいつを捕まえてみろよ。
「そうなの? じゃあ、試しにこの時間に帰ってみてよ」
「わかってるって。今日の塾はキャンセルしたから。じゃあね」
「さよならー」
史人はいつものように帰った。だが、今日はまっすぐ帰る。そして、偽物を捕まえるんだ。
帰り道で史人は考えていた。自分の偽物って、いったい誰だろう。何の目的で家に来ているんだろう。全く想像できない。だが、俺にちょっかいを出しているのは確かだ。必ず捕まえて、ボコボコにしてやる!
「うーん・・・」
史人は家に戻ってきた。いつも夜に帰ってきているので、夕方に家を見るのが新鮮に思えてくる。だが、不思議に思って、見とれている場合じゃない。帰ってきた。あいつを捕まえないと。
史人は玄関を開けた。そこには、史人の偽物がいる。
「ただいまー、ってあれ?」
だが、その偽物は変身した。なんと、偽物は史人に化けていた九尾の狐だった。まさか、こっくりさん? こっくりさんがいたずらしていたのか?
「コーン!」
九尾の狐は素早く家を去っていった。史人は戸惑っている。
「おいお前!」
だが、九尾の狐は素早く、追いつけない。そして、見失ってしまった。一体どこに行ったんだろう。そしてその時わかった。まさか、こっくりさんでやってはいけない事をしたから、こんな事になった?
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