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空手の先生が道場正面、何か難しい漢字が書かれた掛け軸の前に立ちました。
「はい、整列!」
掛け声と共に生徒たちが先生の前に整列します。
みんな、シュンくんと同じぐらいの年齢の子たちでした。
整列して正座します。
「黙想……」
全員で目を閉じました。
道場内が、しんと静まり返ります。
張り詰めた、厳かな雰囲気です。
「う……」
さすがのシュンくんも、このときばかりは思わず泣き声を飲み込むように止めました。
そして何度か先生と生徒がおじぎをすると、稽古が始まりました。
「ほら、シュン! みんな楽しそうにやってるよ」
ママが声をかけてきます。
泣いて、いじけて、頑なにそっぽを向いているシュンくんの背中越しに「えい! えい!」と子供たちの掛け声が聞こえています。
元気で、勇ましくて、強そうな声です。
泣き虫さんの自分とはえらい違いです。
そう思うと情けなくて、やっぱり涙が溢れてしまいます。
シュンくんはグズグズ泣きながら道場の後ろの壁ばかりを見つめていました。壁の木目が涙で滲んで見えました。
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