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「……今日で最後かぁ」
がらんどう。
今の状況を一言で表すなら、それに他ならない。家財が全て無くなって床板だけになった一室でひとり、大の字で寝転がる。これが出来るのもあと数分程度。手元にはスマートフォンと僅かなお金だけ。持っている服も、着慣れた灰色のパーカーとくたくたになった紺色のスカート程度。今更しわになった所で気にもならなかった。
こうなったのは少し前だ。それこそ、二、三ヶ月程度前。
夏休みに入る少し前だったか、授業合間の休み時間に両親の訃報を聞いた。そう長く悲しむ暇も与えられず、両親が今までに残していた金銭で葬儀を執り行い、その後高校を中退した。頼れる親族はいない。父方の親戚は物心つく前に何かしらの揉め事があり、縁を切ったという話を聞いていた。母方の親戚も一度も連絡を取り合ったことが無いから、同じなのかもしれない。だが諦めきれず、両親の親族に電話帳の片っ端から当たってみたものの、どれの一つも通じなくて。
つまり、天涯孤独。これからは一人で全てをこなして生きていかなければならない。高校を中退したのは、今後の生活を学校に通いつつ、バイトしながら……という器用な事は出来ないからだ。なんせ、今まで一度もバイトの面接に受かれた試しがないから。フルタイム稼働のバイトならば、少しは行けるところもあるだろう、と思っていたのだが、……全てダメだった。
くしゃりと頭を掻く。生まれてこのかた背負っていた不幸体質が、本格的に自身の首を絞めに来ていた。幼少期、最も古く思い起こされるのは川で溺れた、という記憶だった。それからも大なり小なり何かしらの目には合っている。もちろん自身から不幸になり得る事象に頭を突っ込んだこと、他者に巻き込まれる形で不幸な目に遭ったりなど全てを問わず。時が経つにつれて完全に慣れてしまい、開き直って不幸上等と起きるトラブルを楽しむような形で今までを生きてきたのだが、ここまでくると笑えない。
更には両親を失ったと同時に奇怪な能力を手に入れてしまう、という現実的ではないオマケまでついてしまった。これがまた現実であまり使えたものではない上、自分自身にとっても発動のタイミングが狙えないもので困っている。うかつに発動してしまったのもあり、今いる町からの居場所も失ってしまったのだからこれも不幸体質の一環とみていいだろう。
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