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将斗は図工の授業で流木細工を作る事にした。以前、テレビで目にした時、自分でも作りたいと思ったのだ。
幸いな事に、祖父母の家から渓流までは子供の足でも行ける距離だった。
将斗は、学校から帰ってきて、意気揚々と渓流に出かけた。
渓流は、この間の大雨の影響で、流木が沢山流れ着いており、宝の山となっていた。
――これは、蛇みたいな形だ。
――こっちのは鳥の羽根みたい。
――これは、まさしく龍だ!
将斗は目をキラキラさせながら、背負ってきたリュックサックに流木を詰める。
そんな将斗の耳に、子供たちの声が届いた。大きな岩の向こうからだ。
「こっちにも沢山あるよ!」「みてみてすごい形だよ!」
将斗は、自分と同じような子供たちがいる事に嬉しくなった。そして、さらなる素晴らしい流木を求めて声の方へ踏み出した。
瞬間。
「まさくん」
その声は耳元で聞こえた気がした。
将斗は、咄嗟に振り向いた。
すると、数メートル先に見知らぬ女性がいた。こちらを見ている様だった。
――誰だろう。
その時だった。バリバリ!! と凄まじい音が将斗のすぐ後ろで轟いた。
跳び驚き振り返ると、折れた大木が横たわっていた。
将斗は突然の事態に怖くなり、すぐにその場から離れてそのまま帰る事にした。
渓流を離れる時、辺りを見渡したが、あの女性の姿はもうどこにも無かった。
将斗は大人になり、ふとその時の事を思い出す。あのまま子供達の方へ向かっていたら、俺は倒木に潰されていただろう。今思えばこちらを誘っていた様にも聞こえる子供達の声は一体何だったのか、それを考えると背筋が凍った。
しかし、子供たちの声に反し、あの時現れた女性には恐怖を感じなかった。
それが何故なのか、その答えは今、将斗の手の中にあった。
将斗は、持っていた写真に再び視線を向ける。
それは、初めて見る産みの母親の写真だった。
そこに映る女性は、紛れもなく、あの時渓流に現れた女性だった。
――あの時、この人が俺を助けてくれたんだ。
写真の中の女性を見つめ、目頭が熱くなるを感じた。
「ありがとう。おかあさん……」
将斗は呟き、空を仰ぐのだった。
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