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「はい」
一人の男が挙手した。整髪料で固めた髪が、黒々としており、年配の人間が多いこの場では、比較的若そうな者である。だが、それでも年齢は四十を超えているものと思われる。
「スクリーンショットが撮れないようにしてみてはいかがでしょうか」
「スクリーンショットが撮れないように?」
「はい。たとえば、スクリーンショットを撮影したら、画像が真っ黒になったり、あるいは真っ白になったりする、というのはいかがでしょうか」
「いいですね! それ!」
早速、彼の意見を評価する声が上がった。
「しかし、どうやって実現すればよろしいのかな?」
疑問に思う声も上がった。
「そこは我々ではなく、ソフト屋さんのお仕事です」
「結局は専門の所に打診するしかない、ということですか」
「……はい」
「ですが、ここで大まかな要件を挙げておくのもいいかもしれませんな」
こうして、スクリーンショット撮影を阻止、あるいは事実上無効化する機能を電子書籍アプリに持たせるという方向で会議は進んだ。
スクリーンショットを不可能にすれば、ネタバレする側は、やりづらくなる。著作権侵害もだいぶ軽減されるだろう。
彼らはそう考えた。
ちなみに、会議で挙がった要件は以下の通りである。
ユーザーがスクリーンショットを撮影したら、画像が単一色となる。または、撮影したファイルが自動的に削除される。
新規のフォーマットを用意し、従来のアプリでは読み込めないようにする。
会議を終えた後、彼らは複数のIT企業に上記要件を打診した。
結果、しぶしぶながらも「なんとかやってみます」という返事が各社から来た。
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