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【1.命を狙われたお飾り妃】
その日は創国の英雄を奉る式典だった。
たくさんの要人が神殿に集められ、祭壇のすぐそばに用意された席には若い国王夫妻が座っていた。
厳かな空気の中、国王の正妃であるイベリナ妃は国王の横に控えながら、小声であれこれ国王に助言をしている。
「よろしいですか、陛下。式典のはじめに、まずは神官様により会場をお清めするための言葉が述べられます。陛下は主催者側の一人として起立なさるんですよ」
「次に、陛下。神官様が創国の英雄の像をお迎えいたします。陛下は子孫の代表ですから、神官様と一緒にお迎えに行くことになっています。合図がありましたら神官様にお供されますように」
「その次は、陛下。陛下の冠をしばし創国の英雄にお返しすることになります。口上が述べられましたら神官様がやってきますから、速やかに冠をお渡しくださいますように」
……
……
こういった式典は数多いため一つ一つ手順を覚えておくことは難しいとしても、まだ若い国王は前日に予習することもしないのでいつも行き当たりばったりだ。だからイベリナ妃がいつも横から小声で「次はね、その次はね――」と助言を出している。
国王はその指示に毎度うんともすんとも答えないが、イベリナ妃に言われたとおりに振る舞い、大抵の儀式はきちんとやり過ごしていた。今回も同様だ。
式典は順調に進んでいるように見えた。
しかし、
「陛下、次は神官様のお隣にお並びくださいませ」
というイベリナ妃の指示通りに国王が席を立ち祭壇の方へ歩いて行ったとき、急にガッと音がしたかと思うと、イベリナ妃の席のすぐ目の前に、ガシャッガチャンッと神殿のシャンデリアが落ちてきた。
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