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「じゃあ、なんだ!」
国王が二人から同時に否定されムッとして聞き返すと、
「あなたの目を覚まさせてやらなくちゃと思ったんですよ!」
とヴォルカーは答えた。
「目を覚ます? 私はしっかり起きている!」
「いいや、寝ているようなもんでしょ。イベリナ妃の覚悟を何だと思っているんです?」
すると、それを聞いて国王がハッとして聞いた。
「もしかして、おまえがイベリナを誑かしたのか? 異国の女神とやらを紹介した?」
「ええ、まあ、なんとなく、乗りかかった船でね」
とヴォルカーがつんとして答えると、
「余計なことをしてくれた!」
と国王は喚いた。
「そうですか? 結構いい仕事をしたかと」
「ジャスミンに子ができなくてもよかったのだ! 跡継ぎのことを考えなかったのは確かに私が悪いが、跡継ぎが欲しくなれば適当に側妃を入れる気でいた。その話はこないだイベリナとも少し話した! ジャスミンとはただの遊びと思ってくれて構わない!」
国王は腕組みをしてふんぞり返り、ヴォルカーを睨みつけながらきっぱりと言った。
途端に、ヴォルカーは気の毒そうな顔になった。
「ええと、国王陛下……。子が流れればとか、遊びだとか好き放題言ってますけど、居るんですよ、あそこに、ジャスミンさんが……」
「!」
国王はぎょっとした。そして、さすがにまずいと思ったらしい。弾かれるように周囲をきょろきょろと見回した。
ヴォルカーはため息をついた。
「ショックで口もきけないようだけど。ありゃー、放心状態で泣く余裕もなさそうだ」
「ジャスミン……聞いていたのか」
国王はようやくジャスミンの姿を認め、気まずそうに顔を歪めた。そして気休めにでも宥めるため駆け寄った。
ヴォルカーは、もう自分の声は国王には聞こえていないだろうなと思いつつ、
「それに、女神ズワンが異国の女神だって? 女神ズワンはこの国にも信仰があったはずだ。端に追いやったのはおまえらだろうが……」
と呟いた。
結局、国王はジャスミンの健康を優先し、またシャンデリアが落ちたという警備上の理由から、『離縁の儀』は取りやめとなった。(※ヴォルカーのせい)
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