【8.離縁の儀】

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「じゃあ、なんだ!」  国王が二人から同時に否定されムッとして聞き返すと、 「あなたの目を覚まさせてやらなくちゃと思ったんですよ!」 とヴォルカーは答えた。 「目を覚ます? 私はしっかり起きている!」 「いいや、寝ているようなもんでしょ。イベリナ妃の覚悟を何だと思っているんです?」  すると、それを聞いて国王がハッとして聞いた。 「もしかして、おまえがイベリナを(たぶら)かしたのか? 異国の女神とやらを紹介した?」 「ええ、まあ、なんとなく、乗りかかった船でね」 とヴォルカーがつんとして答えると、 「余計(よけい)なことをしてくれた!」 と国王は(わめ)いた。 「そうですか? 結構いい仕事をしたかと」 「ジャスミンに子ができなくてもよかったのだ! 跡継ぎのことを考えなかったのは確かに私が悪いが、跡継ぎが欲しくなれば適当に側妃を入れる気でいた。その話はこないだイベリナとも少し話した! ジャスミンとはただの遊びと思ってくれて構わない!」  国王は腕組みをしてふんぞり返り、ヴォルカーを睨みつけながらきっぱりと言った。  途端(とたん)に、ヴォルカーは気の毒そうな顔になった。 「ええと、国王陛下……。子が流れればとか、遊びだとか好き放題(ほうだい)言ってますけど、居るんですよ、あそこに、ジャスミンさんが……」 「!」  国王はぎょっとした。そして、さすがにまずいと思ったらしい。(はじ)かれるように周囲をきょろきょろと見回した。  ヴォルカーはため息をついた。 「ショックで口もきけないようだけど。ありゃー、放心状態(ほうしんじょうたい)で泣く余裕もなさそうだ」 「ジャスミン……聞いていたのか」  国王はようやくジャスミンの姿を認め、気まずそうに顔を歪めた。そして気休めにでも(なだ)めるため駆け寄った。  ヴォルカーは、もう自分の声は国王には聞こえていないだろうなと思いつつ、 「それに、女神ズワンが異国の女神だって? 女神ズワンはこの国にも信仰があったはずだ。(はし)に追いやったのはおまえらだろうが……」 と(つぶや)いた。  結局、国王はジャスミンの健康を優先し、またシャンデリアが落ちたという警備上の理由から、『離縁の儀』は取りやめとなった。(※ヴォルカーのせい)
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