AIマザー

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AIマザー

 西暦2900年  月の上に立つ無数のドームの中では色々なコミュニティがある。  サイカのいるコミュニティは赤ん坊と母親ばかりが暮らしている。  赤ん坊と母親一人のスペースは10㎡ほど。  赤ん坊のベッドと少し動き回れる場所。  適応できない赤ん坊はある程度減っていくので、そうするとそのスペースを隣の赤ん坊が使う。    このコミュニティは子供を産んだ時に母親が亡くなってしまった子供のコミュニティだ。  母親はAIマザー。壁に取り付けられ、動くこちはできない。新生児の時には顔の位置に移る笑顔でミルクを与え、おむつを替え、沐浴をして、人口の日光に当て、新生児を育ててゆく。  全て、壁に組み込まれ、育児に必要なものは全て育っている。    ただ、プログラムは一つなので、それに合わない新生児は命を落としていく。それはどの世界でもある程度は仕方のない事で、弱い子供というのはどうしてもある一定数生まれるものである。  そうすると、自動的に健康な新生児のスペースと合併し、健康な新生児が動くようになった時のスペースが広がるのだ。  生命力に問題のない子供は、1歳までには断乳をして、離乳食が与えられ、服を着せられることに慣れていく。  2歳で自分で服を着られるようになり、食事も徐々に自分で取れるようにAIマザーが育てていく。もちろん、新生児の頃から公用語である英語で言葉かけをするので、殆どの子どもは話せるようになる。  2歳を過ぎても一言も発しない子、AIの顔部分の目を見ない子供には、医療用AIが診察に来る。  精神が不安定、発達に遅滞あり、耳が聞こえない。等、様々なこどもがいるので、その子供立ちは別のコミュニティに移され、それぞれの症状に対応できる専門のAIが面倒を見る。  大人になる時には何らかの仕事ができるように育てていくのがAIマザーの仕事なのだ。  ここで、3歳まで無事に育つと、このコミュニティは自動的に保育施設を併合し、3歳児は自分だけで保育施設に通園する。  動く歩道に乗れば自動で連れて行ってくれるので、AIマザーに送り出されるのだ。  保育施設の時間が終ると自分のスペースに帰る。 「ただいま~。」  AIマザーも元気に挨拶をする。 「おかえりなさい。」  冷たい月の上の 冷たい機械の 心を持っていないけど  虐待なんてない。  育てるのに必要な最良なプラグラムさえあれば、子どもは元気にちゃんと育っていくはず。  感情的な親に振り回されて育つよりも幸せか・・そうでないのか・・・  あなただったら、人間の毒親と、完璧なAIマザーどちらを選びたいですか? 【了】      
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